Googleは2024年4月10日、AndroidプラットフォームやPixelスマートフォンなどを手がけるPlatform and Devices部門において、数百人規模のレイオフを実施した。今回の動きは、同社が1月から進めてきた自主退職プログラムに続くもので、Android AutoやWear OS、そして新興領域のAndroid XRに関わるチームにも波及している。

背景には、AndroidとPixel、さらにはChromeなどの開発部門を統合した新体制によって生じた役職の重複や再編の必要性があるとされ、組織効率の向上が狙いとされる。現在、GoogleはAI開発に注力しており、Gemini関連技術の加速を優先する構えを見せているが、今回の削減がもたらす波紋は少なくない。

情報筋によると、対象となった部門には買収前から2万人以上の従業員が在籍していたが、今回の措置によってPixel関連の開発にも何らかの影響が及ぶ可能性がある。

AndroidとPixelの統合体制が引き起こした再編の波

Googleは昨年、AndroidチームとPixelチームを統合し、プラットフォームとハードウェアの連携強化を図ったが、この体制変更が今回のレイオフに直結している。Platform and Devices部門の指揮を執るRick Osterloh氏の下、ChromeやPixel、そしてAndroidを束ねる大規模な再編が進められ、役割の重複や部署間の境界が再定義された。この再構築の過程で不要と判断されたポジションが浮き彫りになり、数百人規模の人員削減という形で顕在化した。

特に注目すべきは、これまで個別に運営されていた開発ラインが一本化されたことで、既存の専門チームが解体される事態に至った点である。Android AutoやWear OS、さらには拡張現実領域のAndroid XRなど多岐にわたるプラットフォームが整理対象となったことは、モバイルOSの進化と最適化を一手に進める方向性が強まっていることを示している。

今後は、部門を横断した開発効率の向上と柔軟な組織運営が主軸となると見られるが、一方で、チームの専門性やノウハウの分散により、短期的にはプロダクトの進捗や品質面での影響も懸念される。

AI開発への注力がもたらす人材の再配置と影響

Googleは2024年5月、Geminiプロジェクトを中心とした生成AI分野の強化を公式に表明しており、今回の人員削減もこの方針の一環とみられる。Metaを含む他のテック大手と同様、AI分野への資源集中は業界全体の潮流であり、従来の製品やサービスに割かれていた人材と予算が再配分されつつある。今回のレイオフでは、AndroidやPixelという基幹プロダクトに関わっていたエンジニアも対象となっており、その影響の範囲は小さくない。

Geminiのような生成AI技術は、Android OSやGoogleのエコシステム全体への統合が進むと予測されるが、現時点ではその恩恵が実際のデバイス体験にどのように波及するかは明確ではない。AI重視の流れが進む一方で、既存のユーザー体験や安定性、開発スピードが犠牲にならないかという懸念は根強い。

一方で、社内における人材の再配置やプロジェクトの重点化は、中長期的に見れば製品の革新性を高める起点ともなり得る。Geminiへのシフトによって得られる新しいプロダクトや機能が、どこまで実用性を伴って形になるかが今後の焦点である。

人員削減の波紋とPixel製品への影響の可能性

今回のレイオフで影響を受けたのは、単なる周辺プロジェクトだけではなく、Pixelスマートフォン本体の開発チームにも及んでいる。The Informationによれば、対象となったPlatform and Devices部門には、レイオフ前に約20,000人の従業員が在籍していたという。これまでのPixel開発は、カメラ処理やTensorチップ最適化といった独自技術の集積によって差別化を図ってきたが、その中核を担っていた人員が削減対象に含まれていた場合、将来の製品開発への影響も無視できない。

特に、PixelシリーズはAndroidのリファレンスモデルとして、Google独自のソフト・ハード融合を象徴する存在である。その開発力の一部が削がれることで、プロダクトリリースの遅延や品質面での揺らぎが発生する可能性は排除できない。ただし、これはGoogleが無計画に人員削減を進めているというよりは、今後の製品ロードマップに沿った整理と見るべき動きでもある。

すでに投入が予定されているPixel 9シリーズや、将来的なAI統合型Pixel端末の構想が見えてくる中で、今回のレイオフがどこまで開発体制に影響を与えるかは、今後の製品クオリティによって判断されることになる。

Source:Android Central