高ボラティリティが続く2025年の米株市場において、S&P500連動型ETF「SPY」と短期米国債ETF「BIL」の2銘柄だけで構成されるROARポートフォリオが注目を集めている。市場技術者ロブ・イズビッツ氏が独自に開発した「報酬・機会・リスク(ROAR)スコア」に基づき、週次で配分比率を調整するという極めてシンプルな戦略である。
2022年からの累積リターンは12%を超え、同期間に多くの伝統的ETFが低迷する中での健闘が際立つ。特に注目すべきは、平均標準偏差が4.6%にとどまる安定性であり、株式全面安局面でも下落率を最小限に抑える構造となっている。個別銘柄選定を不要とし、「SPYとBILの比率」だけに集中できる点も、投資判断の明快さという意味で評価されている。
ROARスコアに基づく2ETF戦略の構造と市場成績

ロブ・イズビッツ氏が構築した「ROAR(報酬・機会・リスク)」スコアを基盤とするポートフォリオは、SPDR S&P500 ETF(SPY)とSPDR Bloomberg 1-3 Month T-Bill ETF(BIL)の2銘柄のみで構成され、2022年からの約40か月で12%超の累積リターンを記録している。
運用方針は、週次での市場評価に基づき、SPYとBILの比率を調整するという極めてシンプルなものである。下落リスクへの備えとして、BILを基軸に配分を固定する一方、市場の上昇局面ではSPYを増加させる柔軟な戦術が採られている。
この戦略は、2022年以降のような株式および債券市場双方が不安定となった環境下でもパフォーマンスを維持した点が特徴的である。Invesco S&P500 Equal Weight ETF(RSP)の4%未満、iShares Core US Aggregate Bond ETF(AGG)のマイナス6%、iShares Core 60/40 Balanced Allocation ETF(AOR)の4%といった他の伝統的ETFと比較しても、明らかな優位性が確認されている。
また、標準偏差4.6%という数値が示すように、ボラティリティも抑制されており、SPY単体の17%と比べても安定性において明確な差がある。これはポートフォリオの均衡設計と指標の有効性を証明するものである。
ROAR戦略は、短期債券と大型株ETFの組み合わせという従来から存在する構造ながら、指標に基づく比率調整と限定的な選択肢によって、感情や過剰なリスク選好を排除することに成功している。市場環境の不確実性が増す中で、こうした仕組みの明快さが、むしろ中長期の成果に結びついている点は注目に値する。
不安定な相場下での下落抑制と投資判断の簡素化
2025年初頭の市場では、S&P500が2月19日から4月8日までに19%下落するなど、ベアマーケットに近い状況が観測されている。これに対し、ROAR戦略は同期間において90%をBILに、10%をSPYに配分した結果、ポートフォリオの下落はわずか2%にとどまった。この結果は、下落時にリスク資産比率を即座に縮小する方針が功を奏したことを示している。また、配当込みでのリターン比較においても、ROARの成果は他の分散型ETFより際立っていた。
リスク低減と収益獲得の両立が可能となる最大の要因は、複雑な銘柄選定を排し、比率の調整にのみ集中できるという投資行動の合理化にある。「全部を株式」「全部を現金」といった極端な選択を避け、リスク資産とリスクフリー資産の間を柔軟に往復するこの構造は、従来型の60/40戦略では対応が難しい局面で特に効力を発揮している。
加えて、短期金利の上昇基調が続く中では、BILによる保守的なリターンの存在も無視できない要素である。単に暴落時の緩衝材となるだけでなく、利回りを生み出す点でポートフォリオ全体の底上げにも寄与している。市場の方向性が定まらず、個別銘柄への選別眼が求められる現在、判断基準をROAR指標とETF比率の2要素に限定するアプローチは、過剰な情報過多からの脱却を図る上でも有効であると考えられる。
Source:Barchart