Microsoftは、AIを活用してユーザーの操作履歴をスクリーンショットで記録する「Windows Recall」の最終テストを、Windows 11 Insider向けに開始した。現在はリリースプレビューチャンネルのBuild 26100.3902(KB5055627)で展開中で、Copilot+ PC搭載機に向けての一般提供が近づいている。

Recallは数秒ごとに画面を自動撮影し、画像内の情報を自然言語で検索できるようにする機能で、検索結果から「Click to Do」によりアクションを実行することも可能。保存はオプトイン形式で、閲覧にはWindows Helloによる認証が必要となるほか、プライバシー保護の観点からフィルタリングや保存制御などの機能も導入された。

「プライバシーの悪夢」との批判を受けたRecallだが、セキュリティ強化によりリスク対策が進められている。今後の展開は、便利さと安全性のバランスが評価の分かれ目となりそうだ。

セキュリティ対策を強化した再設計 Windows Recallは何が変わったのか

Recallは、2024年に発表された当初から「数秒ごとのスクリーンショット保存」という仕様により、プライバシーリスクが強く懸念された。だが今回の最終テスト版では、機能全体がオプトイン形式となり、ユーザーが自ら記録を選択・管理できる仕様へと変化している。保存されたスナップショットへのアクセスにはWindows Helloでの本人認証が必須で、内容確認にはセキュリティ的な壁が設けられた格好だ。

加えて、記録対象外として「認証情報」「クレジットカード番号」「プライベートブラウジング中の情報」などが自動でフィルタリングされる仕組みも導入されており、これまで指摘されていた「すべてを記録される恐怖」はある程度緩和された。Microsoftはレート制限やアンチハンマリングの仕組みも加えることで、マルウェアなどによる不正取得への対策も明言している。

こうした対応は、Recall機能を「安全なAI機能」へと再構築する試みと見られるが、依然として「そもそも記録されること自体が問題」とする意見も根強い。個々の使い方や考え方によって受け止め方が大きく分かれる機能だけに、導入後も注視すべき変化が続くだろう。

Copilot+ PCと共に始動 RecallはAI時代の中核となり得るか

Recallの一般提供は、Snapdragonを搭載したCopilot+ PCに向けて2024年11月に開始され、現在はIntelやAMDベースのCopilot+ PCにも順次展開されつつある。Windows Insider向けに配信されたBuild 26100.3902(KB5055627)では、機能の安定性と操作体験の仕上げが行われており、事実上の最終確認段階と見られる。

Recallの核となるのは「過去の画面を即座に検索し、アプリやファイルに即アクセスできる」という体験の高速化であり、「Click to Do」など操作のショートカット化も含め、作業の流れを止めないアシストが目的にある。これは単なる検索ツールではなく、AIによる文脈把握と記録の活用が前提の体験設計と言える。

一方で、AI機能としてのRecallが今後どの程度実用性と信頼性を持つかは、現時点では未知数である。AIによる情報の抽出や誤認識が混在すれば、ユーザーの混乱を招く場面も生じ得る。記録機能の精度と制御が両立できるかが、Copilot+ PCを基盤とした新世代のWindows体験において鍵となりそうだ。

Source:BleepingComputer