市場が乱高下する中、ウォーレン・バフェットのポートフォリオが再び注目を集めている。特に、3,340億ドルの現金を保有するバークシャー・ハサウェイは、分散投資によるリスク抑制力と資本余力の強さで安定的な選択肢となっている。

加えて、AIとクラウド需要の継続を背景に、業績回復の可能性が示されるアマゾン、さらに景気変動の影響を受けにくい生活必需型小売のクローガーも有望視されている。経済不透明感が続くなか、これらの銘柄は防御的かつ中長期的な成長余地をあわせ持ち、投資家にとって価値の再評価が進んでいる。

バークシャー・ハサウェイが示す現金戦略と分散投資の堅牢性

バークシャー・ハサウェイは、3,340億ドルにのぼる巨額の現金保有を背景に、市場の乱高下局面でも積極的な投資判断を下せる体制を整えている。この現金は、単なる安全資産ではなく、株価下落局面において他の投資家が動けない中で好機を狙う「火薬庫」となる。

その戦略的柔軟性により、バークシャーは短期的な市場の変動に動じることなく長期的視点での資産形成を可能にしている。また、バークシャーは60以上の子会社を保有し、エネルギー、保険、鉄道、製造、住宅建設、小売など、多様な業種にまたがる事業構造を持つことで、経済サイクルの波に対する抵抗力を高めている。

加えて、同社の株式投資ポートフォリオも約40銘柄に及び、テクノロジー、金融、消費財、通信、エネルギー、ヘルスケアといった幅広い分野に分散されている点も特筆に値する。こうした事実からは、バークシャー・ハサウェイが株式市場の不確実性に対していかに備えているかが浮かび上がる。

一方で、膨大な現金保有は投資機会の欠如による受動的な姿勢と捉える見方も存在するが、2025年のように市場が動揺する環境下では、この「動かざる余裕」が極めて重要な価値を持ち得る。分散と備えの徹底が、長期資本成長の核心に位置づけられているといえる。

 

アマゾンの業績軟化と成長ドライバーの分離構造

アマゾンの株価は過去数ヶ月で約30%下落し、バークシャー・ハサウェイのような相対的な安定性を欠いた動きを見せている。特に消費支出減退によるEC事業への影響と、企業によるAI投資の停滞が、クラウド部門であるAmazon Web Services(AWS)の収益性に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。

経済全体の減速が現実化する中、アマゾンの短期的な業績には不透明感が拭えない。一方で、Prime Videoや広告事業など成長市場への多角展開、さらには医療分野への参入など、収益源の構造変化も進行しており、長期的には業績回復の土台を形成している。

アマゾンの成長シナリオは、AWSにおけるAIインフラ需要の持続や、消費者データを活用した広告戦略の深化、さらにはヘルスケア領域でのM&A戦略によって強化されている。特にOne Medical買収に代表されるように、リアルとデジタルの融合を図る取り組みは、中長期的に医療サービス市場での競争優位性を確立する可能性を秘めている。ただし、株価反転にはマクロ経済の安定とともに、収益回復の明確なシグナルが不可欠である。成長ドライバーが多数存在する一方で、短期の投資判断には慎重さが求められる局面にある。

 

クローガーが担うディフェンシブ戦略の象徴的存在

クローガーは全米に約2,700店舗を展開するスーパーマーケットチェーンであり、経済の浮沈に左右されにくい業態によって投資家の関心を集めている。特にインフレや金利上昇、関税の影響などで景気が冷え込む局面においても、生活必需品の需要が持続するという構造的安定性が評価されている。

主要株価指数が軒並み下落する中でも同社株が上昇している事実は、その特性を裏づけるものである。2024年には比較的安定した経済状況の下で株価が約34%上昇しており、景気動向を問わず成果を上げうる資質を備えている。

さらに、仮にトランプ政権下で関税強化が実施され、輸入コストが上昇した場合でも、クローガーのような国内供給網を持つ小売業は相対的に優位に立つ可能性がある。特に価格競争力と地域密着型の供給体制を武器に、顧客の来店頻度と平均購買単価の維持が見込まれる。一方で、同業他社との差別化が今後の成長余地を左右する点には注意が必要である。市場がリスクオフの方向に傾く中で、クローガーは防御力と適応力を兼ね備えた存在としてポートフォリオに組み込む価値がある銘柄といえる。

Source: The Motley Fool