投資ストラテジストのシェイ・ボロールは、デジタル経済の変革を担う「新・マグニフィセント7」として、AI主導の企業群を発表した。Tesla、Palantir、Snowflake、CrowdStrike、Cloudflare、Axon、Databricksの7社が選出され、それぞれが異なる領域でAIの進化を実装・推進している点が評価された。

特にTeslaは、自社開発のDojoチップとFSDによる自律性強化に加え、ロボティクス展開まで視野に入れており、旧マグニフィセント7から唯一新リストにも残った。Snowflakeはデータの流動性を、Palantirは防衛や医療分野における意思決定支援を担い、AIの本格展開を下支えする。

一方で、これらの企業は市場変動や競争環境の激化といったリスクを抱えており、成長はAIインフラの進展と社会実装の進捗に依存する面もある。AI経済の波に乗る企業群として、今後の成長戦略と業績推移が注視される。

テスラが再選出された背景とAI戦略の進化

Teslaは旧マグニフィセント7から唯一、Shay Boloorが新たに選出した7銘柄にも含まれる特異な存在である。その理由として挙げられるのは、電気自動車メーカーという枠組みを超え、リアルワールドAIの構築に向けた全方位的な展開である。

特にFSD(完全自動運転)においては、自社開発のDojoチップによって学習効率を飛躍的に高め、数十億件にのぼる実走行データを活用した高度な自律判断機構を構築しつつある。また、ヒューマノイドロボット「Optimus」の実用化を視野に入れた取り組みも進行しており、車両・電力・物流を統合したAIループ形成に注力している。

一方で、現在のTeslaは中国市場での販売停滞や競争激化に直面し、株価は年初来で33%下落している。この状況は、先進技術の長期的価値と短期的業績の不確実性が交錯する構図を象徴している。今後の展開として、Optimusの商用展開時期やDojoによる技術革新が、企業全体のAIエコシステム戦略を左右する可能性がある。Teslaはもはや自動車企業ではなく、リアルワールドAI時代における統合型OSの担い手となる道を模索していると言えるだろう。

SnowflakeとPalantirが担うデータと意思決定の基盤構築

SnowflakeとPalantirは、AIの知的処理を支えるインフラと判断支援エンジンとしての役割において、Shay Boloorの選定理由に明確な補完関係を持っている。Snowflakeは「データクラウド」プラットフォームによって、企業や国境をまたいだリアルタイムのデータ共有を可能にし、AIモデルのスムーズな導入と実行環境を整備する。とりわけ、データのガバナンスや高速流通といった機能面での優位性は、AI導入における実用性を大きく引き上げる基盤となっている。

一方のPalantirは、防衛や医療、エネルギーといった高度なリスク管理を要する領域で、AIによる意思決定支援を実現している。AIP(AI Platform)は、単なる分析ツールではなく、解釈と行動を直結させる実行エンジンとして機能し、システム内に深く定着する傾向が強い。両社は異なる視点からAIの根幹に迫っており、前者が情報の血流を担う「循環器系」だとすれば、後者は意思決定という「中枢神経系」に該当する構造を形成している。こうした補完的な役割は、AI経済における実装の深度と持続性に大きく寄与する要素となり得る。

CloudflareとCrowdStrikeが築くAIインフラの防衛と即時性

CrowdStrikeとCloudflareは、Shay Boloorの視点において、AI社会のセキュリティと即応性の両輪を担う存在として特筆された。CrowdStrikeはFalconプラットフォームを通じ、グローバルなエンドポイントから得たデータをリアルタイムで解析・学習し、脅威に即座に対応するサイバーセキュリティ体制を構築している。また、ID管理や可観測性の分野にも進出しており、従来は分断されていた機能を統合したAIネイティブアーキテクチャを提示している。

一方で、Cloudflareは世界中のネットワークエッジでAIを直接稼働させ、4500万件以上のHTTPリクエストを1秒間に処理している。これにより、AIが必要とする低遅延かつ分散的な計算環境を実現し、詐欺検出やパーソナライゼーションといったユースケースに対する即応力を提供している。

両社に共通するのは、AIモデルの性能そのものよりも、その展開環境や保護機構の整備に焦点を当てている点であり、インフラ層の完成度がAI応用の広がりを左右するという構造的な示唆を与えている。AI経済においては、演算性能だけでなく、それを支える防衛力と展開効率が鍵を握る局面に差し掛かっている。

Source:Finbold