サムスンは、GoogleのAI「Gemini」を搭載したスマートホームロボット「Ballie」を今夏に投入予定とし、次世代の家庭用AIデバイスとして注目を集めている。家庭内パトロールやプロジェクター機能、ペットの見守りなど多機能性が光る一方で、業界内では「ヒットは難しい」との見方も強い。背景には、販売価格が未発表のままであることや、初代製品特有の高価格リスクがあるとされ、特にMark Gurman氏はその点を指摘している。

一方で、AppleもiPad型ロボットを開発中とされるなど、大手各社がスマートロボット分野への本格進出を図る動きも活発化している。SF世界の話と思われていたロボティクスは現実の技術となりつつあり、Ballieの成否は今後の家庭内AI市場に大きな示唆を与える存在になりそうだ。

Ballieに搭載されるGeminiがもたらす家庭内AI体験の進化

Ballieには、Googleの先進AI「Gemini」が組み込まれており、従来のスマートアシスタントにはない家庭内での自律的な行動が可能とされている。ユーザーが指示を出さずとも、状況に応じて能動的に動き、照明の調整やペットの管理、必要に応じたアラート送信などを行う。また、本体に内蔵されたプロジェクターによって、動画や資料の投影も可能となっており、リビングだけでなく在宅勤務時のワークスペースにも応用が効く設計である。

AIの処理能力においては、Googleとの再提携が大きな鍵となる。サムスンとGoogleは以前から「Project Moohan」でも協業しており、両社の協調によってデバイス全体の賢さと使い勝手が底上げされている可能性がある。ただし、家庭内ロボットという領域がまだ黎明期にある点や、AIが生活に深く入り込むことへの心理的な抵抗も考慮する必要がある。便利である一方、日常空間にカメラ付きロボットを導入することの是非については今後も議論の余地がある。

初代モデル特有の高価格リスクと市場での受け入れられ方

BloombergのMark Gurman氏は、Ballieが「それほどヒットしない可能性が高い」と警鐘を鳴らしている。その主な根拠として、発売時点で価格が明示されていないことが挙げられる。多機能かつ最新AIを搭載したハードウェアは、初代であるがゆえに開発・製造コストが高騰しやすく、一般消費者の手が届きにくい価格帯になることが懸念されている。特に、スマートホーム分野で定着したAlexaやGoogle Nestのような低価格路線とは対照的な立ち位置であるため、導入のハードルは決して低くない。

仮に高額で発売された場合、ユーザーは「移動できるプロジェクター」や「見守り用デバイス」に数十万円を支払う価値を見出せるかどうかが問われる。こうした懐疑的な見方は、価格未発表の段階で話題性を狙った印象も残り、購入判断の妨げにもなりかねない。高性能であることと実用性のバランスが極めて重要であり、機能性が魅力的でも「その価格である必要があるのか」という疑念を払拭できなければ、広範な普及は難しいと考えられる。

AppleやMetaの動きから見えるロボティクス市場の胎動

Ballieの登場は、サムスンだけでなく業界全体の潮流の一部でもある。AppleもiPad型ロボットの開発を進めており、Meta(旧Facebook)もAIを中核に据えたARスマートグラスに注力している。これらの動きは、AIとハードウェアの融合による次世代コンピューティングへの期待が背景にある。特に拡張現実(XR)やパーソナルAIの領域では、ユーザーとのインタラクションの在り方を根本から見直す構想が進行中だ。

ティム・クックCEOがAR技術でMetaに先んじる姿勢を見せていることからも分かるように、企業間競争はすでに始まっている。Ballieのようなプロトタイプ的な製品が市場に投入されることで、ユーザーの受容性が測られ、技術進化の方向性が探られている。現在はまだ高価格で用途も限定的な存在かもしれないが、これらの製品群が先駆けとなり、将来的にはより洗練されたロボット型デバイスが身近な選択肢として定着する可能性は十分にある。

Source:PhoneArena