ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブ・ハンケ教授は、2025年に米国経済が景気後退に突入する確率は90%を超えると警告した。JPMorganやGoldman Sachsの予測(40~60%)を大きく上回るこの見解は、経済活動の鈍化を主因とし、企業の売上・利益・収益の下落を不可避とするものである。

S&P 500の収益成長予測も過大評価と断じ、成長ゼロまたはマイナス成長への警戒を強調。ジェイミー・ダイモン氏によるマイナス5%の可能性との一致も注目される。加えて、関税政策の失策が大恐慌期のスムート・ホーリー法と同様の市場崩壊を招きかねないとの指摘も行った。

これらの発言は、現在の金融・通商政策が内在する構造的リスクを浮き彫りにしており、投資環境と企業戦略に対して慎重な再評価を促す契機となる可能性がある。

S&P 500収益見通しの過剰楽観に対する批判と根拠

スティーブ・ハンケ教授は、S&P 500の収益成長率に対する市場の予測が現実から乖離していると強く批判している。市場では当初15%の成長が見込まれていたものの、すでに10%へと下方修正されており、それでもなお楽観的すぎると指摘された。この見解は、JPMorganのCEOジェイミー・ダイモン氏が示した、最大でマイナス5%という収益減の予測とも一致している。

ハンケ氏の主張は、収益減少の背景として経済活動の鈍化を挙げるものであり、成長鈍化がすでに企業収益に影響を及ぼしている兆候を示唆している。また、収益成長に対する過信が投資判断の誤りにつながるリスクを警告する構図でもある。企業の実態と市場期待の乖離が拡大する局面では、予測修正のタイミングが株価変動の引き金となる可能性も否定できない。

一方で、これらの指摘は単なる悲観論ではなく、現実的なリスク評価として受け止める必要がある。インフレ動向、金利環境、消費行動の変調など、複合的な要素が企業収益の不確実性を高めており、収益の水準を見誤れば投資戦略全体が崩れかねない。今後は、市場の期待値と企業実績の乖離を注視することが不可欠である。

関税政策と市場暴落リスクの歴史的教訓

ハンケ教授は、1930年代の大恐慌における「スムート=ホーリー関税法」の歴史的影響を引き合いに出し、現在の関税政策が同様の混乱を引き起こす可能性を警告している。当時の関税法は保護主義的色彩を強め、国際貿易を急激に冷却させた結果、株式市場は2年余りで83%もの暴落に見舞われたという事実が語られている。

現在進行中の政策提案、特に中国を含む複数国に対する関税の拡大は、世界経済の供給網と価格構造に対して重大な負荷をかける要素となり得る。市場はすでにその影響を一部織り込みつつあり、価格変動の振れ幅が大きくなっている状況にある。過去の通商政策の誤りが現代にも再現されるリスクは、無視できないレベルに達している。

ただし、現時点では関税の発動が全面的に決定されたわけではなく、政府の方針転換や外交交渉の進展によって緩和される余地も残されている。したがって、市場関係者は過去の教訓を念頭に置きつつ、政策リスクを常に織り込んだ上で柔軟な対応を求められる局面にあるといえる。

 

90%超のリセッション予測が持つ構造的示唆

ハンケ教授は、米国が2025年に景気後退に入る確率が90%を超えると断言した。この数値は、JPMorganやGoldman Sachsが示す40~60%という見積もりを大幅に上回り、従来の市場コンセンサスとは一線を画すものである。彼はこの予測の根拠として、外的ショックではなく、内的な経済収縮こそが主因となると明言している。

景気後退が進行すれば、売上の減少が企業の利益・収益の連鎖的な悪化を招く構図が明らかである。この見解は単なる一学者の警告にとどまらず、経済政策の選択や企業の資本配分戦略に影響を及ぼし得る。加えて、金融政策が現状のままである限り、需要の低迷と成長鈍化は回避困難との見通しが繰り返し強調されている。

一方で、このリセッション予測は、市場に対して過度な動揺を与える可能性も孕んでいる。90%という数値が示す危機感は、資産価格の変動性を高め、投資マインドに冷水を浴びせる効果を持つと考えられる。リセッションリスクの高まりが企業の設備投資や雇用計画にどのような影響を及ぼすか、今後の動向に注視する必要がある。

Source:Finbold