AppleがiOS 18で導入したApple Mapsの「カスタムルート」機能により、ユーザーは自身のハイキングルートを細部まで自由に設計・保存できるようになった。オフライン対応により通信圏外の山間部でも使用可能で、地点ごとのピン設置やランドマークの指定も柔軟に行えるのが特徴である。
ルートの往復・逆走・円形構成といった選択肢も備えており、春の自然を満喫する個人の計画を地図上で的確に視覚化できる点に利便性がある。都市部だけでなくアウトドアにも広がるApple Mapsの進化は、今後の生活様式に新たな地図利用の在り方を示すものとなるだろう。
Apple Mapsのカスタムルート機能がもたらす地図体験の再定義

iOS 18に搭載されたApple Mapsの新機能「カスタムルート」は、ユーザーが任意の地点を自由に結び、ルートを作成・保存できる仕組みである。従来の一方通行的なナビゲーションとは異なり、任意の交差点や施設を起点として経路を手動で構築でき、しかもそれをiPhoneにローカル保存できる点が画期的だ。
往復設定や閉ループ構成などにも対応しており、柔軟性が飛躍的に向上した。通信環境の影響を受けずオフラインでの使用も可能なため、山岳や森林といった自然環境下での行動計画にも適している。Apple Mapsはこれまで、Google Mapsと比較して後塵を拝してきたが、この機能はその差を縮める一手となりうる。
ユーザーが主体的に地図を設計するという概念は、従来のナビゲーションアプリの受動的な利用形態を覆し、地図というツールを“個人の思考の延長”として捉える流れを加速させる可能性がある。Appleが掲げる“より人間中心の設計”という思想は、このカスタムルートの導入を通じて、一歩現実に近づいたといえる。
春のアウトドアにおけるオフライン対応の効用
春先はハイキングやトレイルランニングといったアクティビティが活発化する時期であるが、山間部や谷地ではモバイル通信が不安定になる場面も多い。iOS 18のApple Mapsでは、作成したカスタムルートをデバイスに保存できるため、こうした圏外環境でも事前に設定したルートに沿って行動できるという安心感が得られる。
これは登山計画やファミリー向けの自然探索にも有効であり、安全性の観点からも注目されている。特に注目すべきは、出発地点から離れた場所にいる場合でも、開始地点までのナビゲーションが自動的に提示される設計だ。
地図にアクセスする度にルートを再検索する手間も省かれ、体験全体が滑らかに統一される点がAppleらしい洗練といえる。一方で、オフライン利用を前提とするならば、事前のバッテリー確保や充電環境の整備など、ユーザー側の備えも同時に問われる構造となっており、利便性と責任のバランスを取る意識が求められる。
ランドマーク指定とルートの視覚的設計によるユーザー体験の進化
Apple Mapsのカスタムルートでは、出発地点と目的地だけでなく、途中の通過点としてランドマークや店舗なども自由に選択できる。この構造により、単なる移動手段ではなく「訪れたい場所をつなぐ物語」としての地図体験が可能となる。
たとえば、自然公園、カフェ、展望台といった地点を意図的に組み込むことで、日常の行動に小さな冒険を組み込む感覚が得られる。これはレジャー用途のみならず、教育活動や地域振興にも応用可能性を秘めている。Apple Mapsのインターフェースは視覚的に直感性が高く、ピンの設置やルートの描写がスムーズであることから、テクノロジーに不慣れなユーザーでも扱いやすい。
こうした体験設計は、高齢者や家族連れといった幅広い層の活用を想定したものであり、単なるナビゲーションアプリの枠組みを超えた“道づくりの民主化”としても評価できるだろう。Appleがこの機能に込めた思想は、目的地への最短経路ではなく、「どのように目的地へ向かうか」という旅の質を問うものである。
Source:CNET