米商務長官ハワード・ラトニックは14日、スマートフォンやノートPCなどの電子機器を対象とした関税除外は「一時的な措置」に過ぎず、今後1~2カ月以内に半導体業界向けの新たな関税が導入される見通しであると明言した。今回の発表は、米中間の貿易摩擦が再び激化する兆候として注目される。
トランプ大統領は同日、電子機器は実質的に20%の関税対象に再分類される可能性があると投稿し、除外の意義を曖昧にした。関税緩和の報により一時的な株価回復が期待されたが、政権内部の矛盾した説明が投資家と企業の混乱を招いている。
アップルやサムスン、NVIDIAなどの大手テック企業にとって、今回の政策転換はサプライチェーンの再構築と価格戦略の再考を迫る重大なリスク要因となり得る。
関税除外は一時的措置にとどまると米政府が明言 電子機器の供給網に再び不透明感

米商務長官ハワード・ラトニックは、4月12日に発表されたスマートフォンやノートPCを含む電子機器への関税除外措置について、これは恒久的な政策転換ではなく、今後の半導体関税導入に向けた暫定措置であると述べた。この発言は、トランプ政権が提示した「関税の緩和策」に対する期待感を一転して打ち消すものであり、週末にかけて政権内部から相次いだ説明の食い違いとあいまって、企業や投資家の間に混乱を招いている。
特に注目されたのは、ラトニック長官が「1~2カ月以内に半導体関税を導入する予定」と明言した点であり、対象は電子機器だけでなく、それを構成するチップや生産機器にまで広がる見込みである。加えて、トランプ大統領自身がSNS上で「例外など存在しない」と投稿し、除外品目の実質的な再分類と20%関税の継続適用を示唆したことで、政策の一貫性が疑問視されている。
こうした状況は、米中貿易摩擦の再燃を象徴するものであり、特にエレクトロニクス分野において対中依存度の高い供給網に再び不透明感をもたらした。関税政策の変動性がもたらす影響は、最終製品の価格転嫁だけでなく、生産拠点の見直し、在庫調整、需要予測など広範な経営判断に直結するリスクである。
混乱深まる政権内の発言 産業界と市場に走る不信と混迷
今回の関税措置をめぐる政府内の言説は、貿易政策の方向性を巡って極めて不透明な印象を与えた。ラトニック長官が「半導体には新たな関税を課す予定」と述べた直後、トランプ大統領はSNSで「例外ではない」「別のカテゴリーに移行しただけ」と投稿。さらに米通商代表ジャミソン・グリアは、CBS番組内で「例外という言葉は適切でない」と述べ、今回の措置を「グローバル関税から国家安全保障関税への移行」と定義し直した。
このように政権幹部が同一の政策について異なる説明を行った結果、企業は供給戦略の見直しに確固たる方針を持てず、半導体を含むテクノロジー分野全体で対応が後手に回る恐れが強まっている。特にアップル、サムスン、NVIDIAといった大手企業は、製品価格の設定から在庫計画、部材調達に至るまでの意思決定に大きな影響を受けており、関税方針の揺らぎが株価にも直接的な波及を見せている。
こうした発信の混乱は、米政権が大統領選を見据えて中国への強硬姿勢を強調する一方で、産業界への影響との板挟みにある現実を浮き彫りにしている。政策のブレは短期的な市場不安に留まらず、中長期的な設備投資や雇用計画の遅延を引き起こす懸念があり、企業経営にとっては重大な構造的リスクとなり得る。
Source:apnews