マイクロソフトがWindows 11の普及に注力する一方で、TPM 2.0必須化などの要件が旧型PCを切り捨て、大量の電子廃棄物を生み出す懸念が強まっている。加えて、OS内部の広告表示やAI機能の押し付け、不安定なアップデートがユーザーの不満を加速させており、Windows 10にまで影響が及ぶ現状には根深い問題がある。
macOSと比較しても、ユーザーにとっての快適性や透明性の面で見劣りするようになってきたWindowsの現状は、もはや“プロダクト”ではなく“一方的なサービス”と化している。アップグレードの強制が将来的に信頼を損なう要因となる可能性も否定できず、マイクロソフトには持続可能なOS提供の在り方が問われている。
Windows 11の導入条件が突き付けるハードウェア世代交代の現実

Windows 11はTPM 2.0を必須要件としたことで、多くの旧型PCがサポート外となり、実質的に新たなOSへの道を断たれている。この仕様はセキュリティ向上を目的としており、信頼性の高いプラットフォーム構築に貢献していることは確かだ。ただし現実には、2010年代前半に購入された多くの個人PCや法人向け端末がこの要件を満たしておらず、サポート終了を迎えるWindows 10からの移行が困難になっている。特に公共機関や医療機関では、古いOSが依然として稼働している状況が報告されており、Kasperskyの調査では2021年時点で医療機器の73%が旧OSで動いていたとされる。これにより、廃棄対象となる機器の増加が避けられず、環境負荷や買い替えコストといった別の課題も浮上している。
OSの進化に伴う最低要件の引き上げは、長期的なセキュリティ体制や安定性を担保するうえで必要ではあるが、マイクロソフトが一律に移行を促す現行の方針では、使用可能な端末を突如「時代遅れ」として扱う構造を生んでいる。結果として、性能に問題のないデバイスまでもが排除され、消費者の選択肢が狭められる状況が生じている。OSの進化と現実的な使用環境のバランスをどこで取るべきか、改めて見直しが求められる段階にある。
Windows 11に漂う“サービス化”の兆候と利用者の懸念
現在のWindows 11は、かつてのような「製品」としてのOSではなく、オンラインアップデートやAI機能の追加、広告表示といった“サービスとしてのOS”に変貌しつつある。特に注目すべきは、通知を介したCopilot AIの機能案内や、設定画面内に現れる広告類であり、これらはユーザーの同意なくUIに組み込まれている。PCは個人の所有物でありながら、操作体験の中でコントロールを奪われるような感覚を与える設計が進行している。この方向性が続けば、利用者がOSの変化に対して無力感を抱くようになることも十分にあり得る。
さらに、更新を重ねるごとに挙動が不安定になるという指摘や、パフォーマンスの低下、ゲームや業務用途での互換性問題も複数報告されており、利便性を高めるはずの変更が逆に不信感を招いている。macOSと比較しても、アップデートの透明性や予測可能性において後れを取っている印象は否めない。OSがクラウド連携やAI活用を重視するのは今後の潮流として自然な流れではあるが、そうした進化が一方的な仕様変更や不快な体験を伴うものであるなら、支持を失う結果になりかねない。選ばれるOSであり続けるには、快適さと安心感の両立が不可欠である。
macOSとの対比で見えるWindowsアップデート文化の限界
Appleが提供するmacOSは、ハードウェアとソフトウェアを一体化させたエコシステムの中で運用されているため、安定性と一貫性に優れた体験が実現されている。一方、Windowsは無数のPC構成に対応しなければならないがゆえに、アップデートのたびにドライバ不具合や互換性の壁に直面しやすい。しかも、macOSが無償での機能追加と広告のないクリーンな環境を提供しているのに対し、Windows 11ではユーザー体験を犠牲にしてまでマネタイズ要素が押し込まれている点が対照的だ。
この違いは、OSに求められる価値観の差を如実に表している。Appleは“使いやすさ”と“信頼性”に軸を置き、Windowsは“選択肢の広さ”と“収益性”に重きを置いてきた。ただし、現代の利用者はシンプルでストレスの少ない環境を求める傾向が強まっており、結果的にmacOSのような安定基盤に魅力を感じる層が増えている。マイクロソフトがこのまま現方針を続ければ、長期的にはOSへの信頼離れを加速させる可能性も否定できない。多様性を強みとしながらも、安定した体験を提供できる仕組みづくりが、いま求められている。
Source:TechRadar