ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、保有資産2590億ドルのうち実に23%をアップルとアマゾンの2銘柄に集中させている。アップルは構成比率22.1%を占め、iPhoneの高価格戦略とAI機能を武器に業界を牽引するが、米中関係悪化による関税リスクとAIへの期待外れが懸念材料だ。
一方でアマゾンは、クラウド、広告、ECの3分野を主軸に、生成AIやロボティクスを積極導入し収益を拡大。アナリスト予想ではアマゾンに50%、アップルに32%の株価上昇余地があるとされている。AI戦略を軸にした両社の成長性が、市場の注目を集めている。
アップルが直面する二重の試練 関税圧力とAI導入の期待外れ

アップルは2023年10月に発表したiPhone 16でAI機能「Apple Intelligence」を導入したが、市場からの反応は鈍く、期待されていた買い替え需要は生まれていない。さらに、米中間の貿易摩擦が激化する中で、同社は中国製iPhoneに対するトランプ前政権下の145%という関税上乗せの影響を強く受ける可能性がある。iPhoneは同社売上の半分以上を占めており、価格転嫁か利益率低下のいずれかを迫られる厳しい立場にある。
売上面でも懸念が浮上しており、2023年12月期の売上高は前年比わずか4%増の1240億ドルに留まった。純利益は自社株買いの影響で1株あたり2.40ドルと前年同期比10%増となったが、本業の成長力は見劣りする。市場では2026年度までの年平均10%の利益成長が見込まれている一方で、現在のPER26倍という水準は割高との見方も出ている。特に通商政策の不透明感は、アナリストの業績見通しにも影を落としており、慎重な姿勢が広がる。
アップルは依然として世界のスマートフォン市場で強い価格支配力を持ち、iPhoneの販売価格は平均でサムスンの3倍に達するなど、ブランドの強さは健在である。だが、AI分野での革新性や地政学リスクへの耐性を示さなければ、これまでのような成長軌道に戻ることは難しい。バフェットが重視する長期視点に立てば、こうした課題を乗り越えるか否かが今後の評価を左右するだろう。
アマゾンのAI活用が示す次世代企業の姿 成長を支える三本柱
アマゾンは、eコマース、クラウド、広告という三つの分野で圧倒的な市場シェアを持ち、それぞれの領域にAIとロボティクスを積極的に導入することで収益性の向上を図っている。中でもAWSは、AI活用における先進性が評価されており、最大手クラウドとしてのスケールと顧客基盤が、データ処理と商用化の強みをもたらしている。2023年10~12月期には、広告とクラウドの好調を背景に売上は前年比10%増の1870億ドル、純利益は86%増の1.86ドルを記録した。
広告部門も進化を遂げており、既存の消費者接点に加え、他社向けの「Amazon Retail Ad Service」を新たに展開。これにより、外部企業のサイトやアプリにもリーチする新たな収益源を確保しつつある。また、同社は1000件近い生成AIアプリケーションの開発・導入を進めており、商品説明の自動生成や倉庫の在庫配置の最適化など、多方面でコスト削減と体験向上を図っている。
2024年の業績予想では14%の利益成長が見込まれており、PER32倍という評価は割高とも適正とも取れる水準だが、過去4四半期の平均22%の予想超過実績を考慮すれば、なお上振れの余地があると見られる。AI投資の成果が着実に事業に還元されている点は、既存大手の中でも際立っており、安定的かつ成長性を併せ持つ稀有な存在といえる。
ウォール街の期待と現実 評価が割れるバフェット銘柄の今後
ウォール街では、アップルとアマゾンの両社に対して明確な上昇期待が示されている。40人のアナリストによるアップルの目標株価中央値は250ドルで、現在の189ドルから32%の上昇余地があるとされる。アマゾンについては76人のアナリストが268ドルを目標としており、現株価179ドルから50%の上昇が視野に入る。数字上の期待は大きいが、評価の背景にある事業構造やリスク要因は対照的である。
アップルはブランド力と高収益性を維持する一方で、外部環境に対する脆弱性が露呈しており、投資家にとっては政治・経済リスクへの対応力が問われる局面にある。それに対しアマゾンは、複数の収益源を持ちつつAIによる全方位的な業務効率化を進めており、変化への適応力に長けている。そのため、同じAI関連銘柄であっても投資判断は一様ではなく、時間軸やリスク許容度によって評価が分かれる。
バフェットは保有比率において圧倒的にアップルを支持しているが、ウォール街の成長期待という観点からは、アマゾンの将来性により強い光が当たっている。両銘柄に共通するのは、AIを軸に据えた戦略の成否が今後の評価に直結するという点であり、投資家はその技術実装の「質」と「速度」に注目すべき局面にある。
Source:msn