NVIDIAの新型グラフィックスカード「RTX 5060 Ti」が、8GBモデル379ドル、16GBモデル429ドルという競争力のある価格で登場するとの情報が複数の小売業者から漏れ伝わっている。低電力設計とVRAM構成により、ミドル~ローエンド市場での高需要が見込まれるが、一方で深刻な供給不足が懸念されており、実売価格が大幅に高騰する可能性も指摘されている。
パフォーマンスはAMDのRX 7700 XTと同程度との見方もあるが、実際の市場流通価格が600ドル近くに達する可能性がある中、価格と性能のバランスに対する評価は割れている。
MLIDやVideoCardzといった複数筋の報道を総合すると、RTX 5060 Tiは仕様・価格面では魅力的だが、NVIDIAの供給戦略と価格統制が不透明なままである以上、実際の購入環境においては期待との乖離が広がる恐れがある。性能検証機会の制限や上位モデルとの差別化戦略も含め、市場評価の安定には時間を要する見通しである。
MSRPは379ドルから RTX 5060 Tiの価格設定と実売価格の乖離

NVIDIAの次期GPU「RTX 5060 Ti」について、8GBモデルが379ドル、16GBモデルが429ドルという価格で流通予定であるとの情報が、小売業者のシステム上に一時的に表示されたと報じられている。これはYouTuber「Moore’s Law is Dead(MLID)」の動画やVideoCardzの報告に基づくものであり、複数の販売チャネルで同様の価格が確認されたことから、一定の信ぴょう性を伴って受け止められている。これが事実であれば、既存の価格帯と比較しても競争力のある水準となる。
一方、MLIDはこのMSRPが実際の購入価格として成立する可能性は低く、供給量の著しい制限により市場での価格が大きく上振れする恐れを指摘する。特に、8GBモデルで450ドル超、16GBモデルでは500ドルを優に超えるとの観測もあり、オーバークロック仕様などの上位モデルにおいては600ドル前後となることも視野に入る。これにより、本来の魅力である「手頃な価格」は実質的に意味を失い、ユーザー側に価格対効果の観点で強い疑念が残る構造となっている。
このように、理論上の価格と実勢価格の間に乖離が生じる状況では、製品評価や購買判断が大きく揺らぐ要因となりうる。NVIDIAが価格戦略を柔軟に運用するかどうかが、今後の市場反応を左右する重要な分岐点となるだろう。
供給体制と販売戦略の不透明さがもたらす流通不全の懸念
MLIDによると、RTX 5060 Tiの供給量はRTX 5070を下回るとの予測が立っており、初動から深刻な品薄状態に陥る可能性が示唆されている。特に、Blackwellアーキテクチャを搭載したこのGPUは、低消費電力という特徴からミドル~ローエンドPC市場でも広く需要が見込まれる製品であり、供給の限界は致命的な障害となる。供給制約の結果として、高騰する実売価格に拍車がかかる構図も無視できない。
さらに、NVIDIAがレビュー用サンプルの配布を制限する可能性が報じられており、これは特に8GBモデルのVRAM容量に関する不安が背景にあるとされる。一般消費者に対して十分な検証情報が届かないまま販売が開始されれば、情報の非対称性による購買リスクが増幅される。また、上位モデルであるRTX 5070との差別化を意図して、意図的に供給量を絞る戦略が採られる可能性も否定できない状況である。
このように、価格よりも流通構造に内在する問題のほうが、製品の評価と普及に対して大きな影響を与える可能性が高い。短期的な需給バランスの崩壊にとどまらず、ブランドイメージやチャネル信頼性にも影響が及ぶ展開となることが懸念される。
Source:TweakTown