AMDの次期グラフィックスカード「Radeon RX 9060 XT」に関する未発表仕様がリークされた。2,048基のシェーダー、3.2GHzのブーストクロック、最大16GBのVRAMを搭載するとされ、その構成はRX 9070 XTの性能を半減させたものに近い。128ビットメモリバスと32MBのL3キャッシュを備え、帯域の狭さはキャッシュ設計で補完する設計となっている。
NvidiaのRTX 5060 Tiと直接競合する可能性が高いが、VRAM速度やDLSS 4対応といった技術面では依然として課題を抱える。価格面では329〜375ドルのレンジが想定されており、消費電力は230Wを超える見込みである。現時点では推測の域を出ないが、供給量と価格設定次第では、主流帯GPU市場における有力な選択肢となる可能性もある。
RX 9060 XTのスペックはRX 9070 XTの半構成 シェーダー数と帯域幅に明確な縮小傾向

Videocardzによりリークされた情報によれば、Radeon RX 9060 XTは2,048基のシェーダー、128基のTMU、64基のROPを搭載し、メモリバス幅は128ビット、VRAMは最大16GBとされる。この構成は、RX 9070 XTに搭載される完全なNavi 48 GPUのスペック、すなわち4,096基のシェーダーや256ビットのメモリバスのちょうど半分であり、設計思想としては上位モデルを二分した構造と一致する。クロック周波数は3.2GHzとされ、これは同価格帯のRadeon RX 7600 XTに対し約16%高い。
こうしたスペックから推察されるのは、AMDが同GPUをミッドレンジ帯の主力として設計しているという点である。RX 7600 XTと同一のメモリバス構成を持ちながら、より高クロックで処理性能を底上げし、AI処理にも有効なマトリックスユニットを搭載することで、特にFSR 4といったアップスケーリング技術との親和性を高めている。NvidiaのRTX 5060 Tiに対抗する製品として位置付けられる可能性が高く、コア設計における明確な差別化戦略が見られる。
この構成は性能面で一定の制限をもたらす一方で、価格と消費電力を抑える設計上の合理性を帯びている。上位モデルと同様にRDNA 4世代のL3キャッシュ(32MB)を搭載することで、帯域幅の狭さによるボトルネックを補う意図が明確である。AMDが追求するのは単なるコストカットではなく、性能と価格の最適な交点であり、その姿勢はこのスペック構成に色濃く反映されている。
VRAM速度と帯域幅が性能差に直結 Nvidia製品との差異が今後の競争構図を左右
RX 9060 XTの最大の課題とされるのは、メモリ帯域幅の制約である。GDDR6を採用する同カードのメモリ速度は最大で約320GB/sにとどまる見込みであり、これはGDDR7を採用する可能性のあるNvidia RTX 5060 Tiに比して約40%の差となる。仮にRTX 5060 Tiが28GbpsのGDDR7を採用すれば、448GB/sの帯域が実現されると推定され、メモリ転送性能での優位性が明確となる。
こうした帯域の差は、解像度が高く負荷の大きい処理において顕著な性能差となって現れる可能性がある。特に最新世代のAI支援技術であるDLSS 4との相性を考慮すると、AMD製品は依然としてNvidiaに対抗し得るアップスケーリング機構を欠いており、マルチフレーム生成技術への対応も現時点では不透明である。この点は、VRAM構成の選択とともに、性能評価における重要な指標となる。
一方で、AMDはこれまでキャッシュ階層の設計において強みを持っており、RX 9060 XTにも32MBのInfinity Cacheを搭載すると見られている。この設計は、表面的な帯域数値だけでは測れない応答性やレイテンシ削減に貢献しうるものであり、単純な帯域幅比較では語り尽くせない工夫も含まれている。ただし、それが最終的なパフォーマンス差を覆すほどの効果を持つかは、実地のベンチマーク検証を待たねばならない。
想定価格は329〜375ドル水準か 在庫不足と消費電力が普及拡大の鍵を握る
予測される価格帯としては、RX 9060 XTは329ドルから375ドルの範囲で設定される可能性がある。これはRTX 5060 Tiの8GBモデルが仮に375ドルで販売された場合に、それに対抗する形でAMDがより低価格に設定するとの前提に基づいている。
また、RX 7600 XTの発売時価格が329ドルであったことを考慮すれば、9060 XTもその水準から大きく逸脱することは考えにくい。ただし、実際の販売価格は一部モデルで499ドルに達するという指摘もあり、価格設定は流通量や市場反応に左右される余地が大きい。
消費電力に関しては、RX 9060 XTは230Wを超えるとの見方が浮上している。これは190WのRX 7600 XTよりも明らかに高く、より高クロックでの動作やマトリックス演算ユニットの搭載による影響が示唆される。RDNA 4世代はRX 9070 XTが304Wを消費するなど、電力効率よりも性能優先の設計傾向が強く、冷却設計や電源ユニットの要件にも注意が必要となる。
また、発売初期における在庫状況も不確定要素であり、近年のGPU需要と供給不足の傾向を踏まえると、9060 XTも例外ではない。特にコストパフォーマンスに優れた製品は需要が集中しやすく、供給が限られる中で価格の吊り上げや転売リスクも予見される。普及が拡大するか否かは、性能と価格のバランスに加え、流通の安定性といった外部要因に大きく依存することになる。
Source:PC Gamer