AMDの次世代GPU「Radeon RX 9060 XT」の詳細仕様がリークされ、ブーストクロックは過去最速の3230MHzに到達することが明らかとなった。32基のCUと2048のストリームプロセッサを搭載し、8GBまたは16GBのGDDR6メモリを備える本モデルは、上位のRX 9070 XTを上回るクロック性能を持ち、RDNA 4アーキテクチャの特性を中価格帯に凝縮した構成となっている。

販売価格は269〜379ドルと見られ、NVIDIAのRTX 5060シリーズに対抗する存在として投入される見込みである。AMDは従来モデルRX 7600 XTと同等のプロセッサ数を維持しつつ、アーキテクチャ刷新による効率性とコストパフォーマンスの向上を図っている。ミドルレンジ市場での競争は激化が予想されるが、AMDの戦略は価格決定の柔軟性を残しつつ、優位な立ち位置を築く可能性がある。

RDNA 4の真価を示す高クロック設計と従来モデルとの明確な性能差

Radeon RX 9060 XTは、RDNA 4アーキテクチャを採用しながら、前世代のRX 7600 XTと同一のコンピュートユニット数およびストリームプロセッサ数を維持している。しかし、クロックスピードの上昇が顕著であり、ゲームクロックが2620MHz、ブーストクロックが3230MHzという数値は、従来モデルの最大2755MHzを大きく上回る。これは純粋なハードウェア刷新による性能強化というよりも、アーキテクチャ最適化とプロセス微細化(6nmから4nm)による省電力性能と発熱制御の向上に起因する可能性が高い。

加えて、RX 9060 XTは上位モデルであるRX 9070 XTよりもブーストクロックが高速であるという点において、AMDが中価格帯においても性能面で妥協をしていないことがうかがえる。この設計思想は、単なるSKUの分割ではなく、製品ライン全体を通じてアーキテクチャの強みを最大限に活かす戦略であるといえる。

メモリ帯域の制限(128-bit)という制約を抱えながらも、高クロックによってトータル性能を補おうとする構成は、AMDが性能とコスト効率の両立を図る設計哲学を体現していると言えるだろう。

市場競争に照準を合わせた価格帯設定とNVIDIAへの対抗意識

RX 9060 XTは8GBモデルが269〜299ドル、16GBモデルが329〜379ドルという価格帯を想定しており、これはNVIDIAのRTX 5060および5060 Tiの市場価格帯と重なる。特に注目すべきは、AMDが正式な価格発表を控えている理由が、NVIDIA側の販売価格動向を見極めた上で最終決定する意図がある点である。

この慎重な価格戦略は、単に競合製品との比較優位を狙うだけではなく、投入タイミングや在庫調整も視野に入れた総合的な市場戦略の一環であると考えられる。

実際、RX 9060 XTの構成は、RTX 5060 Tiが採用している高帯域メモリ設計やAIアクセラレーション技術には対抗しきれない部分もあるが、RDNA 4の最適化とクロックの高さを武器に、価格性能比でNVIDIA製品を上回る可能性は残されている。

ただし、256-bitの広帯域を持つRX 9070 XTとの内部競合も視野に入れる必要があり、価格帯の微調整を誤れば上位モデルの魅力を損ねるリスクも存在する。したがって、AMDの価格設定は単なる競合対抗ではなく、ラインアップ全体の整合性を取る複合的な判断材料となるはずだ。

Source:OC3D