2025年のApple株は、米中貿易摩擦とAI開発の遅れを背景に年初来で市場をアンダーパフォームし、過去最高値から23%下落している。関税125%の影響を受けつつも、トランプ政権による一時的な対象除外が限定的な緩和策となった。中国依存の高いサプライチェーンや地政学リスクも株価圧力の一因である。

一方で、売上と利益は過去最高を更新し、サービス部門は14%増の263億ドルに達するなど堅調。AI搭載のiPhone 16の一部地域での成功や、インド市場でのシェア拡大は中長期の成長余地を示唆する。Apple Intelligenceの多言語展開や新製品ラインの可能性も注目点であり、インストール済み端末数の拡大は収益基盤の強化に寄与している。

アナリスト平均目標株価は244.11ドルと現在値を22%上回り、長期的には投資妙味があるとの評価も見られる。ただし、今後もAI分野での技術革新と中国市場の需給調整が継続的な成長を左右するとみられる。

中国依存と関税圧力がAppleの収益構造に及ぼす影響

2025年のApple株は、米中間の貿易摩擦激化を背景に23%の下落を記録した。関税率125%という過去最高水準の関税が中国からの電子製品輸入に適用されたが、トランプ政権は消費者向け製品に対して一部除外措置を講じている。Appleは製造と市場の両面で中国に強く依存しており、この措置の影響は限定的であった。実際、中国本土での売上は前年同期比11%減少し、供給網と需要の両面でボラティリティが増している。

これに対し、ティム・クックCEOは、販売不振の要因を「在庫調整による一時的な問題」と位置づけているが、構造的なリスクの存在を否定することはできない。グローバルサプライチェーンの再編や、脱中国依存を意識した戦略転換が今後の課題となる可能性がある。

また、地政学的緊張の高まりに伴い、同社の収益構造は今後も外部環境に左右されやすい脆弱性を抱えているといえる。地理的多様化を進める中、インド市場など新興地域への軸足移行が、長期的な収益安定化において焦点となるであろう。

 AI戦略の遅れとサービス部門の成長が浮き彫りにする二極化

AppleはAI領域における進展の遅れを指摘されており、AI搭載型Siriの投入時期の後ろ倒しが、投資家の期待を下回る結果となった。生成AIが業界の成長を牽引する中、Apple Intelligenceの戦略は、競合と比して明確性を欠く局面が続いていた。しかし、iPhone 16におけるAI機能の搭載は一部地域で販売の追い風となり、今後日本語や中国語などへの拡張も計画されている。ティム・クック氏もAI展開が「成長の起爆剤になる」との認識を示している。

一方、同社のサービス部門は過去最高の263億ドルの売上を記録し、前年比14%の成長を達成した。粗利益率は75%に達し、有料サブスクリプション契約数は10億件を突破。デバイス販売に依存しない収益構造の強化が進んでおり、ハード主導からソフト・サービス主導への転換が徐々に形を成している。AI戦略の実効性は依然不透明であるが、サービス分野の利益貢献度が一段と高まれば、今後の株価回復に対する一つの支えとなる可能性がある。

 長期成長シナリオにおける株主還元とインド市場の役割

Appleは2025年度第1四半期において、売上と1株利益の双方で過去最高を更新した。調整後1株利益は前年同期比10%増の2.40ドルに達し、株主還元においても同四半期だけで300億ドル以上を投じている。この積極的な還元姿勢は、同社の強固な財務基盤と成長への自信を反映したものといえる。

ウォール街では、2029年にかけて1株利益が12.22ドルまで成長するという見通しが示されており、目標株価は現在値から22%上昇余地のある244.11ドルとされている。

加えて、同社はインド市場を今後の成長の中心地として位置づけており、同四半期にはiPhoneがインドで最も売れたスマートフォンモデルとなった。この実績は、新興国でのAppleブランドの浸透を象徴しており、端末の買い替え率やインストール済みベースの拡大とも相まって、今後の安定成長に寄与する可能性がある。iPhoneのフォームファクター刷新も示唆されており、新製品サイクルと市場の地理的拡張が収益源の分散に寄与すると考えられる。投資家は短期の地政学的リスクと長期の成長ドライバーを慎重に見極める局面にある。

Source:Barchart