Ark InvestのCEOキャシー・ウッドは、トランプ政権による関税発表後に市場が不安定化する中で、Nvidia株を3,000万ドル以上新規取得した。ウッドは通常、知名度の低い破壊的企業を重視するが、AIリーダーであるNvidiaへの積極的な買い増しは異例の戦略変更を意味する。
Nvidiaは2025年度に売上高1,305億ドル、営業利益率66%、フリーキャッシュフロー607億ドルを記録し、データセンター事業が売上の88%を占めた。同社は「Blackwell」アーキテクチャによって、AI計算の性能向上と電力効率の両立を実現し、次世代GPUの年次投入とともに成長加速を狙う。
今後5年間で年平均成長率19%、フリーキャッシュフローは2,220億ドルまで拡大する見通しがあり、AI主導の経済基盤転換において極めて重要な地位を占め続ける可能性がある。43人中37人のアナリストが「ストロング・バイ」を推奨し、株価上昇余地は50%以上とされている。
Nvidiaの業績と市場支配力が示すAI時代の主導的地位

Nvidiaは2025年度に売上高1,305億ドル、営業利益率66%、フリーキャッシュフロー607億ドルを記録し、急成長を遂げた。この躍進は主にデータセンター部門によって支えられており、同部門は売上全体の88%を占める。AIインフラの需要が世界中で拡大するなか、NvidiaのGPUはCPUに代わる加速コンピューティングの中核として位置づけられている。また、同社の最新アーキテクチャ「Blackwell」は、前世代よりも高性能かつ省電力を実現し、指数関数的に増加する計算負荷に対応するための革新技術とされる。
さらに、Nvidiaはワークステーショングラフィックスで95%以上の市場シェアを握り、自動運転やネットワーク技術にも強固な基盤を築いている。こうした優位性により、同社は単なる半導体メーカーから、ハードウェア・ソフトウェアを統合したAIファクトリー構築企業へと進化を遂げている。チップのみならず、アルゴリズムやシステム全体を提供するフルスタック型の戦略は、ムーアの法則の限界を超える性能向上を可能にしており、競合他社との差異化を強めている。
一方、株価は2024年に約3倍に上昇した後、年初来で17%下落しており、短期的には調整局面にあるといえる。ただし、現状の業績と技術的優位性を踏まえれば、この下落は一時的な動揺と捉える見方もある。Nvidiaの市場支配力は依然として強固であり、今後もAIコンピューティングの中心を担う存在であり続けると考えられる。
キャシー・ウッドの戦略転換とNvidia株への大型投資が示唆する方向性
Ark InvestのCEOキャシー・ウッドは、2025年の市場混乱時にNvidia株を3,000万ドル以上取得した。この動きは、通常は小型の破壊的企業を好むウッドにとっては異例であり、技術的主導権を持つ大手企業への資本集中が戦略的に意味を持ち始めた可能性を示している。背景には、AI基盤の確立と加速コンピューティングの不可逆的な成長があると見られ、Nvidiaがその中心的存在であることを再確認する判断と位置づけられる。
この買い増しは、トランプ政権による新たな関税政策が発表され、市場全体が調整に転じる中で実行されたものである。半導体分野が関税の対象から除外されたことを受け、Nvidia株には一時的な売り圧力がかかったが、ウッドはこの局面を長期投資の好機と捉えた形となる。成長ストーリーが継続すると判断する投資家にとっては、短期的な調整局面こそエントリーポイントとなり得る。
ただし、ウッドのような成長志向の資産運用者が大型株に資金を振り向けることは、従来型の分散的ポートフォリオ構築からの脱却を意味する可能性もある。AI領域で主導権を握る数社への集中投資が、新たな運用潮流となるかどうかは今後の動向次第であるが、今回の判断はその兆候の一つといえるだろう。
中長期的成長見通しと投資家評価に見るNvidia株の位置付け
Nvidiaの今後5年間における成長見通しは極めて明確である。2030年度には売上高3,100億ドル、1株当たり利益(EPS)7ドル、フリーキャッシュフロー2,220億ドルという予測が示されており、年平均成長率は19%に達するとされている。これは、GPU主導の加速コンピューティングが従来のCPUベースのインフラを置き換えつつある現状を反映しており、Nvidiaが新たなコンピューティングの標準を築く中核的企業であることを物語っている。
同社の財務健全性も特筆すべきであり、高い営業利益率とキャッシュ創出力に支えられた投資余力は、継続的なR&Dと製品リリースを可能としている。ロードマップには「Blackwell」以降も「Blackwell-Ultra」「Rubin」などの先端アーキテクチャが控えており、性能進化の連続性とエネルギー効率の両立が追求される構図が見えてくる。これは技術革新の速度に対する市場の期待と、企業側の供給能力の合致を意味する。
市場評価としては、アナリスト43人中37人が「ストロング・バイ」と推奨し、平均目標株価は173.95ドルに設定されている。現在の株価水準からは50%以上の上昇余地があるとされ、投資家の期待値は依然として高水準にある。ただし、この高評価が織り込む前提は、今後の技術ロードマップの着実な実行と、データセンター領域における支配的地位の維持であり、外部環境の変動には引き続き注視が必要とされる。
Source:Barchart