ARK Investを率いるキャシー・ウッドは、市場の変動局面を好機と捉え、エヌビディアとアマゾンに対して合計約1億5,560万ドルもの大規模な投資を実行した。両社ともにAIとクラウド分野で突出した技術優位性を持ち、特にNVIDIAは生成AI用GPUの分野で圧倒的な成長を遂げている。一方のアマゾンもAWSの拡張とAI活用によって安定した収益基盤を維持し、クラウド市場においては依然としてトップシェアを確保している。
NVIDIAはAI革命の中核企業として市場の中心にあり、CUDAエコシステムや量子AIの取り組みによって今後の競争優位性がさらに高まる見込みがある。また、アマゾンは生成AIの導入を通じて物流と広告収益を強化し、持続的成長を見据えた経営戦略を展開している。両銘柄とも年初来で株価が大きく下落しており、アナリスト評価は「強い買い」が多数を占めるなど、割安感のある有望な長期投資先として注目される。
エヌビディアへの投資加速が示すAI中核戦略の再評価

ARK Innovation ETFは2024年4月にNVIDIA株を累計340,959株(約3,830万ドル)買い増し、保有比率を0.76%に拡大した。エヌビディアはAI分野における卓越した技術力と市場シェアを背景に、2025年度の売上高を前年比114%増の1,305億ドル、調整後EPSを130%増の2.99ドルへと成長させた。特にデータセンター向けAIアクセラレータ市場では142%増の1,152億ドルと過去最高の収益を記録している。CUDAを中核としたプラットフォームの独自性に加え、AWSやGoogle Cloud、Azureなどの大手との連携も強化されている。
これらの成長は、GPUのみならず、ネットワーク、ソフトウェア、量子コンピューティングの融合によるAIスーパーコンピュータ構築など、多層的な技術基盤に支えられている点が注目される。ウォール街では43人中37人のアナリストが「強い買い」と評価し、平均目標株価は173.95ドル、最高予測では220ドルと、現在価格からの大幅上昇余地が見込まれている。
PERは過去5年平均の71.7倍に対して2026年予想利益ベースで24倍と大きく低下しており、成長株としての割安感が際立つ。市場全体の調整局面を逆手にとったこの投資行動は、長期的視野に立ったAI中核企業への評価が一段と高まったことを示す。
アマゾンの多角化戦略とクラウド収益モデルに見る投資妙味
ARK Investは2024年4月の3営業日でアマゾン株を計104,747株買い増し、同銘柄への総投資額は1億1,730万ドルに達した。同社は現在ETF内で14位の保有比率(2.34%)を占めており、主力ポートフォリオの一角となっている。
特筆すべきはAWSによるクラウド事業であり、年間売上ランレートは1,150億ドル、クラウド市場シェアは30%に達している。AWSは高い利益率とスケーラビリティを兼ね備え、同社の稼働利益の柱である。2024年には売上高6,380億ドル(前年比11%増)、EPS5.33ドル(同83.8%増)と利益面の改善が顕著である。
一方、AI技術の導入による小売業の効率化も静かに進行しており、「Rufus」や「Amazon Lens」などを活用した価格・在庫最適化、配送強化が収益化への足がかりとなっている。2025年度は売上9.3%増、利益14.3%増、2026年度はそれぞれ10.1%、19.3%の成長が予測されており、安定的な成長軌道に乗っている。PERは24倍と、同業他社と比較してもバリュエーションの観点で割高感は薄い。市場全体が不安定な中にあって、アマゾンのように収益性と分散性を兼ね備えた企業は、長期投資の観点から堅実な選択肢と評価されよう。
Source:Barchart