中国の電気自動車(EV)メーカーNioは、欧州市場での販売不振と貿易摩擦によるコスト増を受け、研究開発部門を中心に人員削減を進めている。ドイツやオランダなどでの二桁台の販売減少を背景に、運営コストの25%削減を掲げ、事業の再構築に着手した。年初来で株価は17.3%下落し、企業評価も売上高比0.76倍に留まるなど、市場の信頼は著しく低下している。
一方で、四半期ベースでの出荷台数は前年同期比40%以上の増加を見せており、コスト削減と成長戦略の両立を図る構えも見られる。アナリスト評価は慎重な楽観論が支配的で、株価の上昇余地が30%以上あるとの見方もあるが、関税政策の不透明感や資金調達戦略への不信が投資判断を難しくしている。
欧州市場での販売急減とコスト削減策の全貌

Nioは、2024年第4四半期における欧州市場での販売実績が軒並み低迷したことを受け、経営体制の見直しを加速している。ドイツ、オランダ、ノルウェーといった主要地域ではいずれも二桁台の販売減少を記録し、唯一スウェーデンがわずかにプラスを維持したにすぎない。このような厳しい需要減退を受け、同社は研究開発部門を中心とした人員削減を実施し、運営コストを25%削減する計画を発表した。
これは以前にアメリカおよび中国本土で行った人員整理に続く措置であり、構造改革の一環として位置づけられる。同時に、Nioは新ブランド「Onvo」を通じてマス市場への浸透を図っており、2024年第4四半期の納車台数は前年同期比45.2%増の72,689台に達した。この出荷増は欧州外市場の需要が支えているとみられるが、利益確保には至っておらず、収益面では赤字が拡大している。
同社の決算では、ADS(米国預託株式)当たりの損失が前年より悪化し0.47ドルに達し、ウォール街予測の0.33ドルを大きく下回った。これに加え、資金調達のために約5億2000万ドルの新株発行を行ったが、直前までの「十分なキャッシュポジション」との発言との乖離が市場の不信感を招いた。構造改革によるコスト圧縮と成長戦略の併走には、説明責任と透明性が今後一層求められることになろう。
株価評価と市場心理に映る警戒感
Nioの株価は2025年に入り年初来で17.3%下落しており、低迷が続いている。時価総額は73億ドルにまで縮小し、株価売上高倍率(PSR)は0.76倍と、過去5年間の平均6.22倍を大きく下回る水準にある。この水準だけを見れば「割安」との見方も可能ではあるが、実際には市場からの信頼が大きく損なわれていることを意味する数値である。株式の希薄化を伴う増資や、赤字決算の継続が、投資家心理に冷や水を浴びせている状況である。
アナリスト16名のうち、3名が「強気の買い」、2名が「中立の買い」とする一方、9名が「保留」、2名が「強い売り」と評価しており、全体として慎重な姿勢が支配的である。平均目標株価は4.68ドルと、現在価格から約30%の上昇余地を示唆してはいるものの、これは単なる数値的期待に過ぎず、実態としては「様子見」が最も現実的な立ち位置とされている。
特に、ドナルド・トランプ前大統領が再び関税強化に言及し、中国製品への関税引き上げ圧力を強めている点は、今後のNioの収益構造に大きな影響を与える可能性がある。関税25%の現行水準に加え、145%への拡大が現実味を帯びれば、EV部品供給と価格競争力に深刻な打撃を与える。こうした環境下においては、単純な財務指標だけで投資妙味を測ることは極めて困難であり、市場参加者には長期視点での不確実性を見極める冷静な判断が求められる。
Source:Barchart.com