ドナルド・トランプ前大統領が石炭産業の復興に向けて大統領令を発出し、重要鉱物への再分類や連邦土地の採掘開放など規制緩和を含む支援策を打ち出した。これを受け、世界最大級の石炭生産企業であるピーボディ・エナジー(BTU)の株価は4月8日に9.2%上昇、過去5日間で15.5%急騰した。売上高の0.32倍という割安な評価水準や配当利回り2.5%の安定性も注目されている。
一方で、同社は製鉄用原料炭への戦略転換を進める中で業績が一時的に悪化しており、2024年第4四半期には純利益が前年同期比84.1%減少した。こうした中でも、アナリスト4名全員がBTUを「強気買い」と評価しており、平均目標株価は現在水準から105%の上昇余地があるとされている。
トランプ政権の石炭支援策がBTU株に与える実質的な影響

2024年4月8日、トランプ前政権が署名した大統領令は、石炭産業の再活性化を目的とした包括的な支援策を提示した。具体的には、石炭を「重要鉱物」と再定義し、連邦政府の土地を新規採掘に開放することで規制面の障壁を取り除いた。
」これにより、採掘リースの再拡大や閉鎖された発電所の再稼働といった動きが現実味を帯びてきている。この政策転換を受けて、ピーボディ・エナジー(BTU)の株価は当日に9.2%上昇、直近5営業日で15.5%の急騰を記録した。加えて、時価総額15億5000万ドル、配当利回り2.5%という財務指標が投資家心理の改善に寄与している。
ピーボディは発電所向けの熱炭と製鉄向けの原料炭の両方を供給することで需要の広がりを確保しており、米国内の規制緩和とエネルギー安全保障の文脈から政策の恩恵を最も受けやすい立ち位置にある。特に石炭関連株の中でも注目される理由として、同社が採掘のみならず輸送や仲介といったバリューチェーン全体に関与している点が挙げられる。こうした事業構造は、政策主導型の需給変化に迅速に対応できる柔軟性を持つものと見なされている。
一方で、エネルギー政策の変化は市場全体の感情に左右されやすく、持続性のあるトレンドに発展するかどうかは引き続き慎重な観察が求められる。短期的な株価上昇が長期的な企業価値の反映であるかは、今後の実需動向と連邦予算執行の進展に左右されるであろう。
原料炭シフトに伴うピーボディの業績構造と投資家心理の変化
ピーボディ・エナジーは近年、製鉄業界に不可欠な原料炭の生産強化に軸足を移す戦略転換を進めている。この動きは、脱炭素圧力の中でも比較的需要が維持されるセグメントを狙ったものであり、長期的な収益安定化を視野に入れた方針と読み取れる。
ただし短期的にはコスト増や販売数量の調整が必要となり、直近の2024年第4四半期決算では売上高が11億ドルと前年比9.1%減少し、純利益も84.1%減の3060万ドルに落ち込んだ。これによりEPSは0.25ドルに低下し、ウォール街の予想を下回る結果となった。
このような一時的な業績低下にもかかわらず、株価は反発局面にあり、アナリストは2026年にはEPSが117.9%増の4.51ドルに回復すると予測している。背景には、同社の保有するキャッシュ(7億400万ドル)と持続的な株主還元姿勢があり、安定的な配当政策が下支え材料となっている。さらに、売上高倍率が業界平均(1.16倍)や同社の過去平均(0.52倍)を大きく下回る0.32倍というバリュエーションも、割安感を印象づけている。
市場参加者の中には、原料炭シフトの遅延や国際的な製鉄需要の変動性を懸念する声もあるが、今後の見通しに対しては楽観的なトーンが優勢である。アナリスト4名全員が「ストロング・バイ」と評価し、平均目標株価は24.25ドル、最高では27ドルと、現在水準から大幅な上昇余地を見込んでいる。これにより、変革期における一時的な苦境を乗り越える期待感が高まりつつある。
Source:Barchart.com