テクノロジー大手Appleは、トランプ前大統領による対中関税の再導入が現実味を帯びる中、2025年度の業績悪化懸念に直面している。Needhamは、同社の1株当たり利益(EPS)が最大で28%減少する可能性を指摘し、主力製品の約9割を中国で組み立てる生産体制が再び市場の弱点として浮上している。特例措置が解除されたことで、iPhoneなどへの関税適用が現実となりつつあり、Appleはインドやベトナムなどへの生産移管を進めるも、依然として打撃を回避できていない。

一方、2025年度第1四半期決算では売上とEPSが市場予想を上回る好調な結果を示し、サービス部門の成長が全体を下支えしている。ただし、この成長が関税の逆風に対抗しきれるかは不透明であり、中国が対抗措置としてApple製品の販売制限に動く場合、全売上の17%に影響するとの見方もある。こうした中で、ウォール街の評価は分かれており、平均目標株価は244.11ドルと一定の上昇余地があるものの、投資家心理の不安定化が続く可能性は否定できない。

Appleに迫る関税リスクと製造拠点の脆弱性

Appleは約90%の製品を中国で組み立てており、この集中構造が再び事業継続性の大きなリスク要因として浮上している。トランプ前大統領が提示した最大145%の対中関税政策が再導入されれば、Apple製品は例外なく影響を受け、製造コストの上昇と販売価格の引き上げ圧力に直面する。前回の政権下では同社に対して一部特例措置が適用されていたが、今回の提案にはそのような配慮は見られない。

Appleはインドやベトナム、日本、韓国、台湾などに組立ラインの一部を移管するなど、製造拠点の多角化を図っているが、現時点では中国依存の構造から完全には脱却できていない。こうした状況下で、Needhamのアナリストは、2025年度のEPS(1株当たり利益)が28%減少するとの見通しを示した。これは製品販売台数が現状を維持し、価格据え置きによる利益圧迫を前提とした予測である。

製造戦略の再構築は中長期的な対応が必要であり、短期的な政策変更には柔軟に対応しづらい。Appleにとって今回の通商環境の変化は、サプライチェーンの再定義と地政学的リスクへの耐性構築を加速させる契機となる。ただし、その実行には相当な時間とコストが伴うため、投資家心理への影響が長期化する可能性も否定できない。

第1四半期業績におけるサービス部門の成長と株価下落の乖離

Appleは2025年度第1四半期において売上高1,243億ドル、EPS2.40ドルを記録し、いずれも市場予想を上回る結果を示した。特に注目されたのは、前年比14%増の263億ドルを計上したサービス部門であり、高利益率ビジネスとしてAppleの収益安定性を下支えしている。また、MacおよびiPadの売上がそれぞれ15%超の回復を見せ、iPhone以外の製品群が好調であることも明らかとなった。

このように業績は堅調に推移しているにもかかわらず、2025年初頭からApple株は約20%下落しており、市場との乖離が鮮明となっている。これは、将来的な通商政策や中国市場に対する不透明感が、実績とは別に株価評価へ強く影響しているためと考えられる。ウォール街では「Moderate Buy(中程度の買い)」との評価が大勢を占めているが、外部要因が投資判断に与える影響の大きさを示唆している。

現行の市場反応は、Appleの本源的価値よりも政治・地政学的要因を重視したセンチメントに基づいており、決算内容が評価されにくい構造となっている。今後、サービス部門の伸長が継続し、製品群全体で安定成長を維持できれば、現在の下落基調は過剰反応と見なされる余地もある。

中国市場への依存と政策次第で変動する収益構造の脆さ

Appleは2024年度に中国市場から全体売上の17%を獲得しており、その比重は単一国として非常に高い水準にある。この点において、もし中国が対抗措置としてApple製品の販売を制限または禁止した場合、その影響はAppleのグローバル収益に直撃する。Needhamが示した28%のEPS下落予測は、あくまで最悪のシナリオではないという認識が示されていることも懸念材料である。

4月12日に発表されたトランプ前大統領による一部関税の「一時的免除」は、スマートフォンなど消費者製品に対する125%の課税を見送ったが、中国からの製品に対する20%の関税は継続されており、猶予は限定的である。こうした一時的措置に依存した経営環境は、政策変更ひとつで大きく振れる可能性があり、収益の安定性を損なう。

Appleは、サービス部門において関税の影響を受けにくい収益構造を持つが、それだけではハードウェア販売への依存を相殺しきれない。今後、製造・販売拠点の分散化とともに、消費市場の多極化への取り組みが必要となるが、これには時間と制度的整備が不可欠である。経営戦略が地政学に左右される構造自体をどう打破するかが問われている。

Source:Barchart