電気自動車(EV)市場でTeslaの株価が高値から50%下落するなか、中国のEVメーカーBYDが投資先として再評価されている。2024年に同社は過去最多となる430万台を販売し、EV販売台数でもTeslaに迫る勢いを示した。英国市場でも急速にシェアを拡大し、第1四半期に前年超えの9,271台を販売したことは注目に値する。さらに、売上ではTeslaを上回る1,070億ドル相当を記録し、成長率も29%と高水準を維持している。

技術面でも、5分充電の新型バッテリーや全車種への先進運転支援技術「God’s Eye」搭載などで差別化を図っている。バリュエーションでは予想PERがTeslaの約4分の1と割安感が際立っており、著名投資家ウォーレン・バフェットが保有している点も信頼材料となっている。一方で関税や景気後退といった外部リスクも存在しており、今後の価格推移には慎重な見極めが求められる。

BYDの販売台数と成長率が示す世界市場での拡大余地

BYDは2024年に電気自動車(EV)176万台を販売し、前年比10%の成長を遂げた。これは全車種を含めた総販売台数430万台、前年比41%増という実績に裏打ちされている。特に英国市場での進出は加速しており、2025年第1四半期には9,271台を販売し、前年実績をわずか3カ月で上回った。

一方、TeslaのEV販売は179万台で前年比3%の減少となり、BYDが勢いで凌駕した格好だ。英国市場においてTeslaの販売が7%減少した事実は、BYDの存在感の高まりをより鮮明にしている。

この急成長は販売戦略と製品力の両面から支えられており、特に消費者に訴求するデザイン性と価格競争力が高く評価されていると見られる。中国および英国における販売実績の伸長は、今後他の地域への展開が進んだ場合にも市場獲得力を発揮する可能性を示唆する。世界的なEVシフトの中で、BYDの販売体制と市場浸透速度は競争優位性の一端を物語っており、短期的な売上増加にとどまらない中長期の成長基盤として注目される。

財務指標と技術革新が示す投資妙味と競争上の優位性

2024年におけるBYDの売上高は前年比29%増の7770億元(約1,070億ドル)に達し、Teslaの977億ドルを超える水準に達した。加えて予想PER(株価収益率)は25、翌年ベースで21とされており、同年におけるTeslaの予想PER98や翌年の73と比較して割安である。このバリュエーションの差異は、成長性と収益性を同時に確保している企業構造の違いに起因する可能性がある。投資家にとっては、収益成長とリスクのバランスが取れた銘柄と映るだろう。

また、技術面でも顕著な差別化を図っている。わずか5分で充電が可能な新バッテリー技術、低価格モデル「Qin L」の導入、自社開発の先進運転支援技術「God’s Eye」の全車種無料搭載といった戦略は、製品の魅力度と価格競争力を同時に高めている。これらの動きは単なる短期的な商品アピールにとどまらず、同社の技術的信頼性と開発体制の強靭さを示しており、長期的には収益の安定化にもつながる可能性がある。市場環境の変動にも対応可能な構造的強さが評価されているといえる。 

規制と景気動向がもたらす不確実性とその影響範囲

BYDの成長軌道には明るい材料が目立つ一方で、国際環境に起因する外的リスクも存在する。欧州連合(EU)による乗用車への関税、米国によるバス・トラック輸入への追加関税は、収益構造に直接的な打撃を与える可能性を秘めている。

特に欧米市場での価格競争力が損なわれれば、現地市場でのシェア獲得速度にブレーキがかかるおそれがある。また、世界経済の減速は自動車全般の購買意欲に影響を及ぼし、とりわけ新興市場では消費者が高額なEVを敬遠する動きが強まると想定される。

このような外部リスクは、成長性と収益性の見通しを不透明にする要因となる。たとえ先進技術や価格競争力で優位性を確保していたとしても、政策的制約や景気循環には抗しきれない局面がある。したがって、投資判断においては販売・技術・財務といった企業内要因だけでなく、地政学的・経済的な要因を同時に評価する必要がある。成長の期待とリスクの管理、この両面のバランスが今後の株価推移に大きく影響すると見られる。

Source:The Motley Fool UK