GoogleのPixelスマートフォンと独自のAIモデル「DolphinGemma」を活用し、野生イルカの言語解析に挑む研究が進行中だ。40年にわたりイルカの行動と言語を観察してきたWild Dolphin Projectと、ジョージア工科大学が共同で進めるこのプロジェクトでは、Pixel 6をベースにした専用デバイスで収集した音声データを用い、AIがイルカのホイッスルや鳴き声のパターンを解析。

将来的にはPixel 9を使ったより高性能なモデルへと発展する予定で、イルカの音声に含まれる意味や構造を解読することが目指されている。イルカが発する“名前のような音”や、お気に入りの物体に関連づけたサウンド生成といったアプローチを通じて、人間とイルカの新たな対話の可能性が模索されている。

Pixel 6で動くイルカ対話装置 CHAT、その中核にあるGoogle AIの役割

Wild Dolphin Projectとジョージア工科大学の連携により誕生した「CHAT(Cetacean Hearing Augmentation Telemetry)」は、野生イルカの鳴き声をリアルタイムで収集・解析するシステムである。このシステムの要となるのが、GoogleのPixel 6スマートフォンと、音声パターン認識に特化したAIモデル「DolphinGemma」だ。Pixel 6は処理能力だけでなく、マイクとスピーカーの性能も活用されており、現場での実用性を高める設計となっている。Googleは、AIによってイルカのホイッスルの意味や構造を解析することを目指しており、音の特徴を定量的に捉え、反復パターンや変化の傾向を抽出する訓練を重ねている。

こうした試みによって、従来は専門家の経験と直感に頼るしかなかった音声分類や相互作用の理解が、より客観的かつ高速に進められる可能性が広がる。Pixel 6という汎用的な端末が選ばれている点も興味深く、消費者向けのデバイスが研究用途に適応している事例として注目に値する。年内にはPixel 9を活用した次世代モデルも登場予定とされており、ハードウェア性能の進化が研究の精度やスピードにも直結する展開が期待される。

DolphinGemmaが再現する“イルカ語” 人工音声による学習実験の試み

DolphinGemmaは、従来の音声認識AIとは異なり、イルカ特有の音のパターンや意味の可能性を探る目的で設計されている。このAIは、過去数十年にわたりWild Dolphin Projectが収集した膨大な音声データを学習素材とし、特定のホイッスルや周波数帯の微細な差異を検出する能力を備えている。さらに、Googleはこの技術を用いて、イルカが好む物体――例えば海草やスカーフなど――と結びつけた人工的な音を生成し、それをイルカに聞かせることで新たな学習パターンを誘導する試みに取り組んでいる。

こうした人工音の生成と反応の観察は、イルカの認知や記憶、行動反応のメカニズムを解明する手がかりになりうる。一方で、イルカに対して人工音がどの程度自然に受け入れられるか、あるいは誤解を招くリスクはないかといった課題も残る。DolphinGemmaの出力が「音としての整合性」だけでなく「意味の正確さ」を伴うかどうかは、今後のフィールドテストに委ねられている。この試みは、言語のない動物との相互理解という長年のテーマに、AIが実用的なアプローチをもたらす好例となっている。

Source:Android Police