2025年4月初頭、S&P500が10%以上急落するなど市場の不安定さが際立つ中、投資家の間では過去のクラッシュ時におけるウォーレン・バフェットの発言が再び注目を集めている。彼が2020年のコロナショック後、一般投資家に対して唯一明確に示した推奨先は、米国の経済成長を長期的に享受できる「S&P500インデックスファンド」であった。この助言には、リセッションを一時的かつ健全な現象と捉え、経済拡大を信じるという長期志向の哲学が反映されている。

中でも注目すべきは、経費率の差がリターンに与える影響である。代表的な二つのETF、バンガード(VOO)とSPDR(SPY)の比較では、バンガードの方が長期的に6万ドル以上多く資産を残せる可能性が示唆された。もっとも、現在の最有力投資先としては他に高成長銘柄が存在するとの専門家の見解もあるため、ETF一択に絞る判断は慎重を要する。

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S&P500インデックスファンドを推奨した唯一の場面とその背景

ウォーレン・バフェットが一般投資家に対し、唯一具体的な投資先を示したのは2020年のコロナショック直後であり、それがS&P500インデックスファンドであったという事実は、同氏の長期的視座を象徴するものである。

この推奨は、株価が底値圏にある時期に発せられたものであり、企業の個別選定ではなく経済全体の復元力を信頼する姿勢が如実に表れている。彼の発言は、バーチャル形式で開催されたバークシャー・ハサウェイ年次株主総会の場で行われ、「大多数の人にとって最も理にかなった方法はS&P500を保有すること」と明言された。

この発言には、米国経済の構造的な成長力と、市場サイクルに対する歴史的分析が根拠として存在する。実際、景気後退の平均期間は10か月であるのに対し、景気拡大期は平均で5年間と長期にわたって継続する。S&P500に含まれる企業群は、世界規模で影響力を持つ企業ばかりであり、それらに分散投資する形となるインデックスファンドは、個人が単独で企業を選別するよりも合理的な手段といえる。こうした長期成長に対する確信が、バフェットの一貫した「アメリカへの賭け」の原点となっている。

バンガードとSPDRの運用差に見るコスト構造の重要性

S&P500に連動するETFは複数存在するが、その中でも代表格であるVanguard S&P500 ETF(VOO)とSPDR S&P500 ETF Trust(SPY)の運用コストの違いは、長期投資の成否を分ける要素となる。VOOの経費率は0.03%、SPYは0.09%であり、差はわずか0.06ポイントにすぎないが、30年という長期運用においては6万ドル以上の資産差を生じさせる可能性があるとされている。これは、バフェットの推奨に従いインデックス投資を実行する際に無視できない変数である。

また、両ETFの運用資産総額にも顕著な差が存在する。SPDRは約5,760億ドル、バンガードは1兆3,200億ドルと、後者は倍以上の規模を持つ。これは投資家からの信認の差を示しているとも受け取れる。VOOの優位性は、単なる低コストにとどまらず、運用効率や再投資の仕組みにもある。したがって、インデックス投資の実行においては「どのETFを選ぶか」が投資成果に直接的な影響を与える可能性がある。投資先の選定では、表面的な商品名だけでなく、費用対効果を冷静に比較する必要があるだろう。

インデックス投資の限界と個別成長株への分散可能性

バフェットがかつて推奨したS&P500インデックスファンドは、安定的な成長を狙う投資戦略として極めて有効であるが、すべての市場局面において最適な選択肢であるとは限らない。

指数全体への投資が一定の安定性を提供する一方で、個別銘柄の爆発的成長によるリターンの最大化とは性質が異なることを示している。特にイノベーションや市場環境の変化が激しい現代においては、選別された成長株に一部資産を配分することが、ポートフォリオ全体の収益性を押し上げる可能性を内包している。

ただし、この戦略にはリスクと精緻な情報分析力が不可欠であり、インデックス投資との併用が現実的な落としどころとなるだろう。投資スタイルの最適化は、市場環境とリスク許容度のバランスを見極める作業に他ならない。

Source:MSNThe Motley Fool