Samsungが配信を一時停止した最新OS「One UI 7」において、Secure Folder内のプライベート写真が通知から閲覧可能になるバグが報告された。この不具合は、ギャラリーアプリの「ストーリー自動作成」機能がSecure Folder内の画像を利用し、通知経由で外部アクセス可能な状態を生み出すものである。

ストーリー生成機能は初期設定で有効化されており、多くのユーザーが無意識のうちに影響を受ける可能性がある。サムスンは現時点で公式な声明を出しておらず、アップデート停止の詳細も明かされていないが、ユーザーには手動で機能を無効化する措置が推奨されている。

この問題は、Galaxy S25のようなOne UI 7プリインストール機種にも影響を及ぼす可能性が否定できず、プライバシー保護を重視する環境において深刻な懸念材料といえる。

Secure Folderの設計理念とOne UI 7における機能的破綻

Samsungが提供する「Secure Folder」は、機密性の高いデータを隔離して保管するための機能であり、業務用途やプライバシー保護を重視するユーザーにとって、セキュリティ確保の要として位置づけられてきた。しかし、One UI 7に搭載されたギャラリーアプリの「ストーリー自動作成」機能により、その前提が揺らいでいる。

この機能はSecure Folder内の画像を参照してストーリーを生成し、通知を通じて外部から内容が表示されるという、設計意図に反する挙動を示している。この事実は、フォルダーの境界を超えて情報が流出する構造的欠陥を示唆しており、Secure Folderという名称が示す役割と乖離している。

また、Samsungはこの機能を初期設定で有効にしていたことから、ユーザーが意図しない形でプライベート情報を漏洩するリスクが常時存在する状態にあった。セキュリティ強化を目的に運用されていた領域が、逆に情報拡散の起点となっていることは、モバイルOS設計の信頼性に疑問を投げかける結果である。

今後のアップデートで技術的修正が行われる可能性はあるが、セキュリティポリシーの運用と機能展開との整合性がとれていない限り、同様の構造的リスクは再発しうる。この問題は単なるバグの範疇に収まらず、情報隔離設計の根幹に対する信頼を揺るがす事象といえる。

通知機能がもたらす情報境界の曖昧化とリスク

One UI 7においてSecure Folder内の写真が通知によって外部に露出するという今回の問題は、ユーザーインタフェース設計とセキュリティ制御の乖離が引き起こした典型例である。通知はユーザー体験の向上を目的とした要素であり、本来であればアクセス制限を補完する役割を担うべきである。

しかし、ストーリー生成の通知はSecure Folderの外からタップ可能であり、意図せぬ情報の可視化を招いている。この現象は、OS内部における領域分離の論理的破綻を意味するものであり、単なるUI上の演出では済まされない。

情報を「しまう場所」と「見せる手段」がOS上で交差する際、適切な制御が存在しなければ、セキュリティに関わる境界が形骸化する。特に業務用端末や法人運用においては、アプリ間の通信や通知制御に対して高い整合性が求められるため、このような不具合は実害に直結しやすい。

ストーリー自動生成機能は一見便利な機能であるが、Secure Folderとの併用において制御不能な挙動を示す時点で、設計段階からの整合性確認が不十分であったことを示している。通知は利便性と引き換えに情報露出リスクを常に伴う存在であり、セキュア環境との共存には極めて慎重な設計判断が必要である。

ユーザー対応策とSamsungに求められる再発防止体制

現時点でユーザーが取れる対応策としては、Secure Folder内のギャラリーアプリで「ストーリーを自動作成」機能を無効化することで、通知経由での写真露出を防止する措置がある。この操作は数回のタップで実行可能であるものの、その存在や手順を認識していないユーザーにとっては無防備な状態が継続していることになる。

Samsungが明確な広報手段を講じていない現状において、情報格差によるリスク差が拡大している。本来、Secure Folderに関連する機能更新にあたっては、事前にアクセス制御の整合性検証がなされるべきであり、それが機能設計の要件と直結する。

今回のように通知という周辺機能が内部領域と不適切に結びついた場合、セキュリティ設計そのものが後退することになる。Samsungは今後、単なる機能修正にとどまらず、セキュリティ運用におけるレビュー体制の見直しと、事後対応の透明性を高める必要がある。

また、OSアップデートの一時停止という措置がとられたものの、その理由について公式な説明が出されていない点も、企業の説明責任という観点から課題が残る。今後、Secure Folderの信頼性を回復させるためには、ユーザーが自らの情報を確実に守れる構造と運用体制の構築が不可欠である。

Source:MakeUseOf