Appleの株価が2%以上上昇し、時価総額は再び3兆ドルを突破した。背景には、トランプ政権がスマートフォンやチップなどを新たな関税から一時的に除外すると発表したことがある。特にAppleは主要製品を中国などで製造しており、関税強化が懸念されていた。

関税免除により、Appleの年間負担額は推定440億ドルから70億ドルへと大幅に圧縮される見通しとなり、投資家の間で先行きへの懸念が後退した。ただしこの措置は恒久的なものではなく、政権側も今後の見直しの可能性に言及している。

市場は一時的な緩和と捉えつつも、Appleの財務体質と政策対応力の強さを改めて評価しており、Microsoftを抜いて米企業時価総額トップの座を奪還した。

Appleに迫った関税リスクとその回避策がもたらした市場の反応

トランプ政権は4月12日、スマートフォンや半導体、コンピューター製品などを新関税から一時的に除外する方針を表明した。これにより、Appleの主力製品群であるiPhoneやiPad、MacBookなどが直接的な影響を免れ、株価は2%以上上昇。Appleは時価総額で3兆ドルの大台を回復し、Microsoftを再び上回る企業価値となった。この決定は、Appleのように製造拠点の大半を中国やアジア圏に置く企業にとって、経営の根幹を揺るがしかねない政策変更を回避する意味を持つ。

実際、トランプ氏はこれまでAppleに対し「米国内での生産移行」を度々求めており、強硬な関税方針とともに警戒されていた。4月初旬には、中国からの輸入品に最大145%の関税が課される可能性が報じられ、Apple株は大きく下落していた。しかし今回の関税除外措置を受け、モルガン・スタンレーはAppleの年間関税コストが従来の440億ドルから70億ドルにまで減少すると試算。市場ではAppleの財務的安定性が再評価され、先行きへの期待が高まっている。

ただし政権側は、この免除はあくまで暫定的措置であると繰り返し強調しており、関税方針の恒久化は見通せない状況にある。短期的には回避されたリスクであっても、中長期におけるAppleの供給網再編や生産戦略の見直しは依然として避けられない課題とされる。

ティム・クックとトランプ政権の関係性が生んだ企業外交の影響

ホワイトハウスでの記者会見にて、ドナルド・トランプ大統領は「私はティム・クックと話をしている。彼を助けたところだ」と語り、Appleに対する一定の支援姿勢をにじませた。トランプ氏はこれまでAppleに対しては厳しいスタンスを取っていたが、選挙戦を見据えた産業界との融和も含めて、クック氏との関係が戦略的に変化している可能性がある。こうした発言は、Appleが米政権との対話を通じて政策的なリスクを部分的に緩和している実態を象徴するものであり、経営陣の政治対応力が株主から高く評価されている要因ともなっている。

Appleにとって関税免除は単なるコスト回避にとどまらず、CEOレベルでの交渉力を活かした企業外交の成果とも言える。特に2025年の政治環境において、規制リスクや地政学的要因が経営に直結するなかで、ティム・クックが見せた柔軟な関係構築は、他のグローバル企業にとっても重要な示唆を含んでいる。一方で、政治的発言の裏にある真意やタイムスパンを見極めることなく、短期的な市場反応に過度に依存することは投資判断上のリスクにもなり得る。

今後、Appleが同様の外交的手腕を他国の規制問題や税制変更においても活かせるかは注目されるところである。企業が政策の不確実性にどう向き合うかという命題において、Appleの戦略はひとつの実例となっている。

Source:CNBC