ジョー・バイデン前大統領が退任後の沈黙を破り、再び公の場へ姿を現し始めた。4月にはシカゴでの障害者支援団体向けスピーチを予定しており、今月に入ってからはIBEWでの講演や模擬国連会議への参加など、公的な活動を立て続けに行っている。

背景には、トランプ前大統領による関税政策への反発と、経済混乱に対する批判の高まりがある。CBSの世論調査では、有権者の約3分の2が関税に反対し、経済悪化の責任はトランプ氏にあると見ていることが示された。一方で、民主党内にはバイデン氏の再登場に慎重な声もあり、党内の評価は分かれている。

バイデン氏の再登場とトランプ関税政策への世論の反発

ジョー・バイデン前大統領が再び全国規模の舞台に立ち始めた背景には、ドナルド・トランプ氏による関税政策に対する国民の不満がある。CBSの最新世論調査では、アメリカ有権者の3分の2近くがトランプの貿易政策に反対し、その経済的影響についても否定的な評価を示している。特に、現下の物価高騰や企業収益への圧迫が、関税政策によって助長されたとの見方が強まっており、バイデン氏にとっては発言のタイミングとして極めて戦略的である。バイデン氏は、シカゴでの障害者支援団体向けスピーチを通じて、社会保障制度の重要性と共和党の政策への批判を展開する構えであり、トランプ政権との政策的対比を前面に押し出す意図がうかがえる。

一方で、バイデン氏の登場がトランプ批判に留まらず、民主党内の再編や世論への影響力行使の始まりであるとの見方もある。しかし、それが党全体にとって有利に作用するかどうかは不透明であり、バイデン氏の存在が党内の世代交代論と衝突する構図も表面化しつつある。トランプの関税政策が経済的混乱をもたらしているという評価が確実に広がっている一方で、それを利用して再び主導権を握ろうとするバイデン氏の動きが、民主党にとって吉と出るか否かは慎重に見極める必要がある。

民主党内におけるバイデン復帰への温度差

バイデン氏の再登場に対して、民主党内からは賛否が割れている。特に注目されるのは、かつて同氏の支援者で資金集めにも携わった人物の「スピーチ自体は悪くないが、全国的な話題の中心に戻すべきとは思わない」という発言である。こうした発言は、民主党の一部がバイデンの存在感を歓迎していないことを物語っており、党内での求心力が低下していることを示唆している。加えて、別の元側近は「トランプ再選を招いた張本人が今になって声を上げるのは厚かましい」と述べ、バイデン氏の復帰に対する強い不信感を表明している。

バイデン氏自身は、週に2度デラウェア州からワシントンD.C.に列車で通い、かつての補佐官や議会関係者と接触を重ねるなど、政界との関係を再構築する動きを進めている。しかし、こうした行動が党内の結束を促すどころか、旧態依然とした政治への回帰として捉えられ、新たな支持層の形成にはつながりにくい側面もある。現職から退いたリーダーの再登場には、しばしば敬意と懐疑が交錯する。民主党としては、バイデン氏の存在をいかに活用し、あるいは距離を取るかという戦略的判断が求められている状況にある。

Source:POLITICO