トランプ政権がスマートフォンなど電子機器への関税を一時的に免除したことで、ダウは312ポイント、S&P500とナスダックも上昇し、米国株式市場は久々の全面高となった。Apple株も2.2%上昇し、テクノロジー株が牽引した格好だが、同時に発表された「半導体への課税予定」や「自動車部品への関税強化方針」など、貿易戦争の行方は依然として混迷を極める。
加えて、消費者のインフレ期待が1年半ぶりの高水準に達したほか、ゴールドマンCEOや著名投資家ダリオ氏が「景気後退のリスク」に言及。S&P500は短期的な反発を見せたものの、年初来高値には届かず、市場の本格回復には政権の明確な政策転換が不可欠との見方が強まっている。
電子機器への関税免除で米株上昇も、政策の一貫性欠如が市場を揺さぶる

4月14日、トランプ政権が発表したスマートフォンやコンピュータなど中国製電子機器に対する関税免除措置を受けて、米国株式市場は広範囲にわたり上昇した。ダウ平均は312ポイント(+0.78%)、S&P500は+0.79%、ナスダックは+0.64%と、主要3指数すべてが高値で取引を終えた。特にAppleは2.2%の上昇を記録し、テクノロジーセクターが市場全体をけん引した。
しかし、この免除措置はあくまで一時的な対応に過ぎず、商務長官ルトニック氏は電子機器への恒久的関税免除を否定。今後1〜2ヶ月以内に半導体への新たな関税を発動する方針を示しており、市場の安定性に疑念が残る。また自動車部品にも新たな課税が予告されており、対象の業界や投資家に与えるインパクトは限定的ではない。
市場が求めているのは一過性の譲歩ではなく、整合性ある政策と透明性である。S&P500は先週、2023年以来最高の週間上昇を見せた一方、年初水準には戻っておらず、投資家はなお慎重な姿勢を崩していない。今回の上昇も、確固たる政策的裏付けに欠ける「期待先行」の域を出ておらず、根本的な懸念は解消されていない。
インフレ懸念と景気後退リスクが市場心理に陰を落とす
ニューヨーク連邦準備銀行が月曜に発表した調査によれば、米国消費者の1年先のインフレ期待は前月から0.5ポイント上昇し、3.6%と過去18ヶ月で最高の水準に達した。これは生活費の上昇に対する国民の不安を反映するものであり、消費行動の抑制要因となる可能性がある。調査結果は、足元の株価上昇とは裏腹に、経済ファンダメンタルズの弱含みを浮き彫りにしている。
さらに、ゴールドマン・サックスCEOのデビッド・ソロモン氏は決算説明会で「景気後退の兆候が顕在化しつつある」と指摘。著名投資家レイ・ダリオ氏も、現政権の貿易政策が米国経済を深刻な局面に追い込む可能性を懸念しており、「今は極めて重要な転換点」との認識を示している。企業の設備投資や雇用判断も慎重になり、短期的な株価反発が実体経済を伴わない点への警戒感が強まっている。
CitiはS&P500の年末目標を6,500から5,800へと下方修正した。これは主要機関が市場の不透明性を重く見ている証左であり、今後の経済政策に明確性と持続性が求められていることを示している。投資家心理は一時的に緩和されたが、金利・為替・商品市場の動向次第では再びセンチメントが悪化するリスクも否定できない。
Source:CNN