ドナルド・トランプ氏が関与するSolana基盤のミームコイン「Official Trump(TRUMP)」が、4月18日に総供給量の20%に相当する4,000万トークンを一括解放する。このクリフ・アンロックによって市場に約3億2,100万ドル分の新規供給が発生し、急激な売り圧力が懸念されている。

既にTRUMPは1月の最高値73ドルから8ドル台まで下落しており、過去の暴落では81万超のウォレットが損失を被ったとされる。さらに、デリバティブ市場では4月14日時点で資金調達率がマイナスに転じており、トレーダー心理は明らかに弱気に傾いている。

ウォレット保有者の減少やオンチェーン指標の悪化も進み、投資家の関心は低下傾向にある。トランプ再登場への期待と現実の乖離が露呈する中、このアンロックイベントはミームコイン市場の転機となる可能性がある。

4,000万TRUMPトークンの一括解放が市場にもたらす構造的リスク

「Official Trump(TRUMP)」トークンは4月18日、全流通供給量の20%にあたる4,000万トークンを一括で解放する。このクリフ・アンロック方式により、約3億2,100万ドル分の新規供給が市場に流入する見込みである。暗号資産市場では、こうした大規模アンロックは流動性を高める一方、短期的な売り圧力を強める傾向がある。特に今回のように一括解放される場合、そのインパクトは分割方式とは異なり、価格変動への影響がより直接的かつ急激となる。

Tokenomistの分析によれば、このアンロック後も日々400万ドル相当のトークンが追加で解放され続ける見通しであり、市場の需給バランスは長期的にも緊張を強いられる。需要が安定しなければ、価格の下押し圧力が持続する可能性が否めない。加えて、過去に価格急騰の局面で開発者側が3億5,000万ドル以上の収益を確保していたことが判明しており、この事実も売却懸念を煽る要因となっている。

このように、供給側の構造的増加が短期間で発生する中で、TRUMPのような話題先行型のトークンが持続的な価値を維持するには、投機的関心ではなく実用性やコミュニティ基盤に依存するフェーズへの移行が不可避となる。話題性だけで資金を呼び込む段階は既に峠を越えつつある。

デリバティブ市場とオンチェーンデータが示す弱気転換の兆候

TRUMPトークンをめぐる市場環境は、デリバティブおよびオンチェーンデータの両面から明らかに変調を示している。4月14日時点でオープン・インタレスト加重ファンディング・レートは-0.0282%まで急低下し、ショートポジションが増加していることを示唆する。これは市場参加者が今後の価格下落を見込んでいる証左であり、特に供給過多が目前に迫る中では、その判断が合理的な戦略に映る。

また、ウォレット保有者数も減少傾向にあり、Dune Analyticsのデータによると1月の80万件超から63万7,235件まで低下している。これは7万人以上がこのトークンを手放したことを示し、一般投資家の関心が後退している様子がうかがえる。わずか0.3%の減少と見る向きもあるが、1月に比べれば明らかな失速であり、特に初期の高騰で利益を得られなかった層にとって、継続保有の動機は希薄化している。

市場のセンチメントは数字で測定されるものであり、TRUMPを取り巻く現在のデータ群は、かつての熱狂とは対照的な冷静さを映し出している。取引所での出来高も減少傾向にあることを踏まえれば、短期の価格回復には相応の外部刺激が必要とされるだろう。

政治的話題性が支えた幻想と現実の断絶

TRUMPトークンの失速は、政治的影響力が必ずしも市場の持続的成長を担保しないという構造的な限界を露呈している。トランプ氏の大統領復帰に際し、暗号資産市場には一時的な活況が見られたが、期待先行の相場は瞬く間に失速し、1月20日の就任日以降、ビットコインのミリオネアアドレスは約20%減少、3万4,737件が消滅したとのデータがFinboldによって示されている。

TRUMPの初値73.43ドルという高騰も、開始からわずか2日で達成されたものであり、その後は70%以上の下落を経験した。この急落によって81万件以上のウォレットが損失を被ったとされ、市場参加者の間には価格形成における信頼性の欠如と、過剰なボラティリティへの警戒感が広がっている。トランプ氏という巨大な政治的象徴が関与していても、デジタル資産の価値が長期的に支持される保証にはならないことが浮き彫りとなった。

このような現象は、特定の話題や人物への依存から脱却し、プロジェクトそのものの実用性や透明性、持続的なエコシステムの構築が、今後のトークン価値において不可欠であることを物語っている。TRUMPトークンの軌跡は、暗号資産市場における「熱狂」と「覚醒」の対比を端的に示す事例である。

Source:Finbold