AI半導体大手Nvidiaの株価が一時反発したものの、テクニカル分析では200週移動平均線にあたる56ドル付近までの急落余地が示唆されている。米中貿易摩擦やトランプ前大統領による半導体関税案の影響を受け、市場は依然として不安定な様相を呈している。

現在の株価は112ドル台と堅調に見えるが、主要なサポートラインの下抜けや中期トレンドの崩れにより、さらなる調整局面への突入が警戒されている。一方、アナリスト陣は強気の見解を崩しておらず、目標株価の中央値は174ドルと楽観的である。

需給環境や関税の不確実性が高まる中、テクニカルとファンダメンタルの評価が乖離しつつある点は注目に値する。市場の方向性を見極めるには、短期の価格動向よりも中長期の構造的リスクを見据える視点が不可欠だ。

テクニカル分析が示すNvidia株の下落リスクと56ドルという節目

Nvidiaの株価は足元で112ドル前後と堅調に見えるが、テクニカル指標は警戒シグナルを点灯させている。週足チャート上では100ドルの主要サポートラインを下回り、ローソク足構成も弱含みの兆候を見せる。特に注目すべきは、200週単純移動平均線(SMA)である約56ドルの水準が意識されており、現状から約50%の下落余地が存在する点である。この水準は2022年後半に最後にタッチしたマクロサポートゾーンであり、テクニカル的な反発の起点とされてきた。

短期的な反発として、90ドル割れからの17.6%上昇が見られたが、これは関税報道によるセンチメントの一時的改善によるもので、構造的な回復とは言い難い。中期移動平均線やトレンドサポートゾーンも突破されつつあり、チャート全体としては下落基調への転換が示唆されている。こうした構造の崩れは、AI需要や業績に直接反映されていないが、価格動向として市場の不安心理を物語っている。

一方で、この水準が試されるかどうかは今後の地政学的要因や関税政策次第であり、実際の下落が確定したわけではない。ただし、機械的な取引やアルゴリズムの観点から、200週SMAは多くの市場参加者が反応しやすいラインであり、その動向には注視が必要である。

 

関税政策の変化が与える影響と市場の反応

Nvidiaの株価変動は、半導体分野における米中間の貿易政策の影響を強く受けている。今回の株価上昇も、ホワイトハウスが半導体などを新たな関税リストから除外したとの報道を受けたものであり、短期的な安心感が市場を押し上げた。しかし、ドナルド・トランプ前大統領が再度、半導体輸入に関する新たな関税の導入を示唆したことで、先行きには不透明感が漂っている。

このように、政権交代や通商政策のスタンスが変化するたびに、Nvidiaのような輸出依存型の半導体企業は激しい値動きに晒される。特にAI関連GPUの生産においては台湾TSMCなど海外サプライチェーンへの依存度が高く、関税強化はコスト構造全体を揺るがす要因となり得る。4月11日時点でのCitiやUBSのコメントにあるように、短期的な輸出データの好調さは関税前の駆け込み需要である可能性も否定できない。

米国市場では、こうした地政学リスクが顕在化するたびに半導体株全体が連動して売られる傾向がある。NvidiaのようにAI関連で注目されている企業でも、政策による外的ショックには抗えない構造的リスクを抱えており、投資判断には慎重さが求められる局面である。

 

強気継続のアナリスト評価と予想価格の乖離

市場が不安定な値動きを見せる中にあっても、ウォール街のアナリストはNvidiaに対して依然として強気の姿勢を崩していない。TipRanksに登録された41名のアナリストのうち、実に37名が「買い」と評価しており、目標株価の中央値は174ドルに設定されている。最低でも120ドル、最高で220ドルと、現在の株価を大きく上回る水準が見込まれている。

Citiのアティフ・マリク氏は、ハイパースケーラーによるデータセンター投資の抑制を背景にGPUの販売鈍化を予測しつつも、目標株価は150ドルに据え置き、「買い」評価を維持した。UBSも185ドルの目標株価を支持しており、台湾の輸出データやTSMCの好調な売上をNvidiaの成長継続と結びつけている。しかしながら、こうしたデータには関税を見越した一時的な先行発注の可能性も含まれており、需要の持続性には疑念も残る。

市場価格とアナリスト予想の乖離は拡大しており、テクニカル分析が示す弱気シグナルとの整合性が問われる局面に差し掛かっている。こうした中では、実需や業績予想の修正といった新たな材料によって、アナリストのコンセンサス自体が今後見直される可能性も排除できない。期待先行の評価が、果たして持続的な成長に裏打ちされたものなのか、冷静な検証が必要である。

Source:Finbold