Microsoftは2024年に批判を浴びたRecall機能を、Windows 11 Build 26100.3902のRelease Preview Channelにて再び試験的に展開した。Recallは画面のスナップショットをAIで検索可能にするが、個人情報の扱いに関して強い懸念が出ていた。今回の再リリースでは、保存の同意とWindows Helloによる認証が必要となるなど、プライバシー保護策が強化された。

対応デバイスはSnapdragon搭載のCopilot+ PCに限定されており、IntelやAMD機でも将来的に利用可能となる可能性がある。セキュリティ問題への再発防止策として、Microsoftは生体認証によるアクセス制限や保存の一時停止オプションを用意したが、依然として完全な信頼を得ているとは言い難い。

再設計されたRecallの仕組みと導入条件

Recall機能は、ユーザーのPC画面を定期的に撮影し、画像データをAIで整理・検索可能にする新しい試みである。今回のWindows 11 Build 26100.3902での再リリースにおいて、Microsoftは利用時の条件として、スナップショット保存の明示的な同意とWindows Helloによる本人確認を義務づけた。これにより、従来よりもユーザーの管理下に機能を置く構成となっている。さらに、保存の一時停止やデータの削除も可能であることが明示され、操作性と透明性が一定水準まで引き上げられた。

対象はSnapdragonを搭載したCopilot+ PCに限定されており、IntelやAMDのシステムではRecall機能は未搭載となっている。ただし、将来的な展開余地が示唆されており、ハードウェアの性能やAI処理能力によっては今後の普及も視野に入っている。Microsoftはまた、その他の機能更新としてWindows検索やタスクバー、Phone Linkなど複数の改善も並行して進めている。

一連の改善策はRecallの安全性向上を意図したものだが、依然として根本的な懸念が残る点もある。AIが収集・分析する情報の範囲や利用目的が曖昧なままでは、機能の有用性を正当に評価することが難しい。

プライバシーと利便性のせめぎ合い

Recallがもたらす最大の利便性は、過去の作業や閲覧内容を自然言語で簡単に呼び出せるという点にある。これは「記憶の再構成」に近い体験であり、検索対象が画像ベースであることから、文章やアプリ名を覚えていなくても目的の情報にたどり着ける強みがある。ただし、その裏側では、デバイス上に断続的に記録され続けるスナップショットが常に存在し続けるという特性がある。

2024年の最初の展開時には、クレジットカード情報や社会保障番号が無防備に記録される恐れが指摘され、セキュリティ研究者からも厳しい批判が相次いだ。その後の見直しにより、生体認証や保存制御機能が追加されたものの、記録そのものを行う設計は変わっていない。この点は、根本的にプライバシーと利便性が相反する構造の中にRecallが存在していることを示している。

Microsoftが示す「すべてユーザーが管理できる」という前提が徹底されるかどうかは、今後の運用とフィードバック次第である。Recallが完全に信頼される機能となるためには、利便性以上に安心感を生む技術設計が欠かせない。

Source:MakeUseOf