米中貿易摩擦の激化により世界市場が揺らぐ中、コストコ・ホールセール(COST)は際立った耐性を示している。株価は2月の高値から一時9%以上下落したものの、年初来ではS&P500のマイナスに反し6.7%の上昇を見せ、過去1年では33.6%もの上昇を記録している。
2025年度第2四半期決算では売上・会費収入・既存店売上が軒並み増加し、特にEC売上は前年比20.9%増と急拡大。今後のEPSも二桁成長が予想される中、アナリスト34名中22名が買いを支持し、平均目標株価は1,064.41ドルに設定されている。
ただし、現在のPERは53.80倍と小売業平均を大きく上回り、割高感が意識されやすい。輸入比率の構成から関税リスクは抑えられる可能性があるが、不確実性は残存している。需給主導の株価上昇が一巡した際、業績との乖離が修正される場面も視野に入れるべきである。
決算と業績指標が示すコストコの強固な事業基盤

コストコ・ホールセールは2025年度第2四半期決算において、前年同期比9%増の637億ドルという堅調な売上を記録し、市場予想を上回る成果を示した。1株利益は4.02ドルとなり、前年から2.6%の増加を見せたが、予想を若干下回る結果であった。しかし、会員収入は前年の11.1億ドルから11.9億ドルへと増加し、同社の会員制モデルが依然として強い支持を得ていることが確認された。
さらに、既存店売上は全体で6.8%、米国に限定すれば8.3%の増加を記録し、物理店舗での堅調な需要を裏付ける内容であった。注目すべきはEC(電子商取引)部門であり、前年比20.9%という急伸を見せた点である。これにより、デジタル分野での成長が同社の成長戦略において中核的な役割を果たしつつあることが明確となった。
数値が示すように、同社は短期的なボラティリティの中でも収益性と顧客基盤の強化を両立している。売上の構成比として輸入品が約3分の1を占めるものの、中国・メキシコ・カナダからの調達はその半数未満に留まるため、報復関税による影響は相対的に限定的と見られている。こうした多面的な事業構造が、コストコを外部環境に左右されにくい企業たらしめている要因といえる。
株価水準と市場評価が示唆する期待とリスクの均衡
コストコ株は現在、将来利益に対して53.80倍という高水準のPERで取引されており、業界中央値15.71倍や自社の過去5年平均40.96倍と比較しても割高感が際立つ。株主還元としては、四半期配当が1株あたり1.16ドル、年間配当4.64ドルで利回り0.47%と控えめだが、20年連続で増配を継続するなど、持続的な還元姿勢は明確である。
2025年に入ってからCOST株は6.7%上昇し、S&P500が8.6%下落する中で相対的に高いパフォーマンスを維持している。過去1年間での株価上昇率も33.6%と市場平均を大きく上回っており、この点が投資家の高評価につながっている。ウォール街では34人中22人のアナリストが「買い」または「強く買い」としており、平均目標株価は1,064.41ドルと、現在の水準から約9%の上昇余地が見込まれている。
ただし、株価の割高度は将来的な期待値に強く依存している構造でもある。実績ベースの業績が予想を下回る局面では、現在の高水準のバリュエーションが大きな下振れリスクに転じる可能性も否定できない。成長ストーリーに基づく評価が続く限り、安定した業績達成と外部要因への耐性の持続が今後の正当化条件となるだろう。
Source:Barchart.com