AMDは次期主力GPU「Radeon RX 9060 XT」において、最大3.3GHzのOCブーストクロックを実現すると報じられている。RDNA 4アーキテクチャを採用し、8GBまたは16GBの低速GDDR6メモリを搭載。2048基のストリームプロセッサを内蔵する「Navi 44」GPUを採用し、競合のNVIDIA GeForce RTX 5060 Tiに対抗するポジションに位置付けられている。

新製品はRX 9070 XTよりも小型設計でありながら、従来世代のRX 7600シリーズを上回る性能が期待される。特にレイトレーシング性能の大幅な向上とFSR 4対応は、RDNA 3世代の課題解消に繋がる可能性がある。一方で、メディアエンジンの非搭載やディスプレイ出力の制限など、用途を選ぶ構成も指摘されている。

2025年5月下旬のComputexでの正式発表が予想される中、NVIDIAのRTX 5060 Tiが先行する見通しであり、主流向けGPU市場における性能競争の焦点として、両社の動向に注目が集まる。

RX 9060 XTの仕様と設計 Navi 44搭載で実現する性能の全貌

AMDが投入する新型GPU「Radeon RX 9060 XT」は、2048基のストリームプロセッサを持つ「Navi 44」チップを採用し、リファレンスクロックで2620MHz、ブーストクロックで3230MHzに設定されている。さらにOCモデルでは3.3GHzに達するとされ、主流向けGPUとしては異例の高クロック設計となる。

また、メモリは8GBまたは16GB構成で、速度は従来より抑えられたGDDR6を採用する。RX 9060 XTの電源要件は550Wで、一部モデルには8ピン×2の電源コネクタが必要となる構成が想定される。

本製品が搭載するNavi 44は、上位のRX 9070 XTのGPUに比べ物理的に小型であり、ストリームプロセッサ数は半分に抑えられている。ただし、それがそのまま性能を半減させるものではなく、効率的なクロック設計や新アーキテクチャの特性によって、ミッドレンジクラスの中では競争力のある水準が確保されると見られる。スペック上はGeForce RTX 5060 Tiとの正面対決が想定されており、特に主力市場における性能価格比の競争が焦点となる。

AMDが本モデルに込める意図は、RDNA 4世代の進化を一般層に浸透させることであり、特定の分野での省略(例:メディアエンジン非搭載)がその戦略を際立たせる。性能偏重ではなく、用途別最適化に基づく開発姿勢がうかがえる設計である。

RDNA 4による進化とFSR 4の導入 画質と性能の両立を目指す構成

RX 9060 XTは、レイトレーシング性能の強化とFSR 4の実装を通じて、前世代となるRDNA 3ベースのRadeon RX 7600シリーズからの大幅な飛躍を実現する可能性がある。従来、RDNA 3はGeForceの同クラス製品に対して性能および画質の両面で劣勢に立たされていたが、今回の設計ではそれらの弱点に直接対応したアプローチが確認できる。特にFSR 4によるアップスケーリング技術の進化は、高負荷なゲーム環境におけるフレームレートと画質の両立に寄与するとされている。

一方で、RX 9060 XTは最新のメディアエンジンを省略している可能性があるとの指摘もあり、動画エンコードやストリーミング用途を主目的とするユーザーには適さない側面も持ち合わせる。さらに、ディスプレイ出力が3系統に制限されるという情報もあり、拡張性に制限が加わる構成となる見通しである。このように、ゲーミング中心の用途に最適化された設計思想が色濃く表れている。

AMDが選択したこの戦略は、すべてのユーザー層に迎合するのではなく、主にゲーミング体験に特化した製品を届けることに重点を置いた結果と考えられる。性能を最大化しつつもコスト面での競争力を確保するための明確な割り切りが、製品設計の根幹にあると読み取れる。

発表時期と市場構図 RTX 5060 Tiとの直接対決を控えた戦略的展開

AMDのパートナー企業は、Radeon RX 9060 XTの正式発表を2025年5月下旬に開催されるComputexで予定しているとされる。このタイミングは、競合するNVIDIAのGeForce RTX 5060 Tiが同年4月に発表されるとの見方が強まる中で、AMDが製品の完成度を高め、適切な市場投入機会を慎重に計っていることを示している。主流向けGPU市場は、技術的優位性だけでなく、価格設定や在庫供給のタイミングが成否を左右する領域である。

RX 9060 XTの登場により、RDNA 4世代のアーキテクチャが市場に本格的に投入される。これにより、AMDはRTX 5060 Tiだけでなく、既存のRTX 4060シリーズや今後の5060ベース製品に対する強固な対抗軸を構築することとなる。性能だけでなく、コスト効率や製品選択肢の広さといった点でも評価を受ける可能性がある。

とはいえ、5月下旬という投入時期は競争上のハンディにもなり得る。早期にリードを得るNVIDIAに対し、AMDは確実な完成度と訴求力を伴う製品パッケージを提示しなければ、ユーザーの関心を奪うことは難しい。特に価格帯、消費電力、冷却性能といった実用面の差異が購買判断に直結する市場においては、スペック以上に実運用における優位性の訴求が求められる。

Source: TweakTown