Wedbush証券のダン・アイヴス氏が、トランプ前大統領による関税政策とテスラのブランド力低下を「ダブルパンチ」と表現し、テスラ株の目標価格を従来の550ドルから315ドルへと引き下げた。テスラは2025年第1四半期に前年比13%の販売減を記録し、株価も年初来で32%下落。

背景には、マスク氏の政治的発言が中国市場を中心に消費者の信頼を損ねたことがある。加えて、売上・利益が市場予想を下回った2024年第4四半期決算や、第1四半期の納車実績悪化が重なり、市場では将来の成長見通しへの懸念が高まっている。

一方で、アナリストの評価は二極化しており、強気派は依然としてTSLAに上昇余地を見出す声もある。特に自動運転やヒューマノイド開発といった中長期の技術ビジョンには一定の期待が残るものの、現在の株価水準は極めて流動的であり、今後の決算発表やマスク氏の対外姿勢次第では、さらなる評価修正も排除できない。

テスラを直撃した三重苦:販売不振、関税圧力、ブランド毀損

2025年第1四半期のテスラの納車台数は前年比13%減の336,681台にとどまり、過去3年で最も低調な水準となった。販売不振の背景には、モデルYの成長鈍化、世界的な競争激化、そしてイーロン・マスク氏の政治的発言によるイメージ悪化がある。さらに、トランプ前大統領による25%の関税導入は、販売コストに直接的な打撃を与えた。これにより、同社の販売戦略は抜本的な見直しを迫られている。

収益面でもテスラは試練に直面している。2024年第4四半期の売上高は257億ドルにとどまり、前年同期比わずか2%の増加に留まった。自動車部門は8%の減収となり、価格引き下げによるテコ入れも効果が薄かったことが明らかになった。調整後EPSは0.73ドルと予想を下回り、投資家の期待を裏切った形である。こうした業績悪化は、テスラの今後の事業運営に対する市場の警戒感を強めている。

一方で、マスク氏が掲げる自動運転技術(FSD)やヒューマノイドロボット「Optimus」など、未来志向の技術開発には依然として注目が集まっている。だが、現在の収益基盤が揺らぐ中で、これらの新規事業に資源を振り分ける姿勢はリスクとも捉えられる。経営資源の配分と技術革新の速度のバランスが、今後の事業継続性における重要な判断軸となるだろう。

ダン・アイヴス氏が目標株価を315ドルに引下げた背景

テスラの長年の支持者であるWedbush証券のダン・アイヴス氏が、目標株価を従来の550ドルから315ドルへと大幅に下方修正した。アイヴス氏は、同社が直面する課題として「関税のコスト圧力」と「ブランド毀損による消費者離れ」を明確に指摘している。特に、中国市場における競争環境の悪化と、BYDをはじめとする現地EV企業への顧客流出が深刻であり、テスラのグローバル販売戦略全体に影響を及ぼしているとされる。

また、アイヴス氏は、マスク氏の政治的発言が米国外の消費者、とりわけ中国市場での信頼性を損ねていると警告。実際に、Wedbushの分析によれば、こうした発言が原因でテスラは将来の顧客基盤のうち少なくとも10%を失った可能性があるという。企業価値の根幹をなすブランドと信頼性が揺らいでいる今、マスク氏の行動が株主価値にどう影響するかは無視できない要素となっている。

一方で、アイヴス氏はTSLAに対する「アウトパフォーム」評価を維持しており、長期的には依然として成長の余地があるとの見解を残している。ただし、その前提には経営陣の戦略修正と市場との対話が不可欠であることを示唆しており、現行の方向性を維持したままでは評価回復は難しいとの警鐘とも取れる。慎重なスタンスの中にも、テスラへの再評価の可能性を含ませる姿勢が見て取れる。

投資家評価は二極化、成長期待と不確実性のはざまで揺れるTSLA

アナリスト41人によるテスラ株の評価は、強気派と慎重派の間で大きく分かれている。「強い買い」は16人と1ヶ月前よりも増加している一方で、「強い売り」も10人と高い水準にあり、市場内での意見の乖離が顕著である。平均目標株価は306.39ドルであり、現在の株価から約20%の上昇余地が示されているが、この見通しは不安定な要素を多分に含む。最も強気なアナリストは目標を488ドルと設定しており、楽観論と悲観論が交錯している。

こうした評価のばらつきは、テスラの将来に対する不確実性を象徴している。たしかに、FSDやロボタクシー構想、Optimusといった技術開発は次世代の事業柱となりうる要素を備えており、それに魅力を感じる投資家が存在するのも事実である。しかし、それらの実現可能性や収益化の時期については未だ明確な道筋が見えておらず、株式評価に織り込むには早計との見方も根強い。

短期的には、2025年4月22日に予定されている第1四半期決算が重要な転換点となる見込みである。市場はEPS0.36ドル、売上高219億ドルを予想しており、実績がこれを上回るか否かで評価の分岐点が生じる可能性がある。テスラが今後も成長銘柄として評価され続けるか否かは、次回決算後の市場の反応とマスク氏の姿勢変化にかかっているといえる。

Source: Barchart.com