世界的な関税不安が高まる中、ASML Holdingの株価は2024年4月に一時600ドルを下回る場面を見せ、年初来で約29%下落した。米欧の対立と中国への高関税がグローバルサプライチェーンを直撃し、ASMLのように国境を越えた需要に依存する企業には深刻な影響が及んだ。短期的には関税猶予による急騰が見られたが、その反発は長続きせず、インフレデータと景気減速懸念が再び重しとなって

一方で、ASMLは2024年Q4決算で売上高・純利益ともに前年同期比大幅増となり、EUV装置の需要が成長を牽引した。アナリスト24人中19人が「強い買い」と評価し、目標株価の平均は現水準から40%の上昇余地を見込んでいる。地政学的リスクと景気循環が株価に影を落とすものの、半導体製造装置における技術的優位性は中長期的な評価を下支えしているとの見方が広がりつつある。

関税リスクと景気鈍化がASML株を圧迫 反発後の株価は再び下落基調に転じる

2024年春、世界的な関税問題と景気後退懸念の中で、ASML Holdingの株価は一時的な急落を記録した。4月上旬には600ドルを割り込み、2023年以来の安値となる578.51ドルをつけた。これは年初来29%の下落幅に相当する。背景には、中国への関税引き上げと米欧貿易摩擦の激化による市場の混乱がある。ASMLはグローバルなサプライチェーンに深く組み込まれており、関税による影響を回避しづらい構造にある。

ただし、米政府による90日間の関税猶予が報じられると、ASML株は急騰。空売りの買い戻しも加わり、15.4%の反発を見せた。しかし、その勢いは持続せず、インフレ鈍化を示す経済指標が逆に需要減退や景気ブレーキの予兆と受け取られ、投資家心理を冷やした。関税に対する根本的な解決の兆しが見えない中、短期的な上昇は一過性に終わった格好である。

このように、ASML株は政策要因やマクロ経済の変動に対して極めて敏感な状況にあり、技術力の優位性とは無関係に外部環境の不透明さに翻弄される展開が続いている。回復の兆しが見えても、それが持続的なものとなる保証はなく、投資判断には慎重さが求められる局面にある。

EUV技術と好業績が示す中長期成長の可能性 アナリストは高評価を維持

ASMLは2024年第4四半期決算で市場予想を上回る業績を示し、強固な技術基盤を再確認させた。売上高は前年比28%増の93億ユーロ、純利益は27億ユーロに達し、EPSは31.5%増の6.84ユーロを記録した。EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置に対する需要が業績を押し上げ、受注残の42%がEUV関連で占められた。2024年通期の売上は314億ドルに到達し、今後も先端製造技術を牽引する存在であり続けることが示唆された。

アナリスト24人のうち19人が「強い買い」、残りの5人が「ホールド」と評価しており、同社の市場優位性に対する信頼は揺らいでいない。平均目標株価は951.62ドルで、現水準から40%の上昇余地が見込まれている。2025年通期のEPS予測は23.1%増の25.62ドル、翌2026年にはさらに16.4%増の29.83ドルと見積もられている。将来的には売上高を600億ユーロ、粗利益率を60%にまで引き上げる可能性も検討されている。

もっとも、これらの予測は市場環境と技術採用ペースに依存する側面が強く、外部環境が悪化すれば実現が遅れるリスクも内在している。しかし、ASMLのEUV技術は競合他社が容易に模倣できない水準にあり、長期的には半導体製造のボトルネック解消に向けた重要な資産となり得る。技術革新の中心にある企業としての存在感は、投資家の戦略的視点から再評価される余地が大きい。

Source: Barchart.com