アクティビスト投資家Elliott Investment Managementは、Hewlett Packard Enterprise(HPE)に15億ドルの大型投資を実施した。これを受けてHPE株は急騰したが、その背景には米中貿易摩擦の影響や業績未達といった重大な懸念が横たわる。HPEはサーバー部品の供給で中国・台湾・韓国への依存度が高く、関税リスクが業績と株価に打撃を与えている。さらに、期待されたJuniper Networksの買収は米司法省の訴訟により不透明な状況にある。

一方、アナリストの多くはHPE株に対して「やや買い」とする見解を維持しており、約30%の上昇余地も示されている。ただし、この見方はElliottによる経営関与や政策変更によって初めて実現する可能性がある。目先の株価上昇に惑わされず、外部要因とファンダメンタルズの両面から冷静な判断が求められる。

Elliottの大型出資がもたらすHPE経営への影響と不確実性

2025年4月、Elliott Investment ManagementはHewlett Packard Enterprise(HPE)に対して15億ドルの出資を行った。この動きによりHPE株は当日5%超上昇したが、Elliottが具体的にどのような経営施策を求めるかは依然として明らかにされていない。Elliottはこれまでもテクノロジー企業への積極的な関与で知られ、その手腕によって企業価値を引き上げてきた実績がある。一方、HPEへの関与が短期的な収益改善を伴うかは不透明であり、市場は様子見の姿勢も崩していない。

HPEは2025年3月に発表した通年見通しで、調整後1株利益を1.70〜1.90ドルと提示し、アナリスト予想の2.13ドルを大きく下回った。これは、同社の構造改革が想定より進んでいない可能性を示唆している。さらに、140億ドルで進めていたJuniper Networksの買収は、米司法省が独占禁止法違反の懸念から差し止めを求める訴訟を起こしており、成長ドライバーとして期待された買収効果も霧中にある。出資がもたらす経営陣への圧力と、それに対する企業の反応が今後の評価を大きく左右する構図となっている。

対中関税と供給網依存がHPEの競争力を揺るがす構造的要因

Hewlett Packard Enterpriseの業績には、関税政策とグローバルサプライチェーンの構造的課題が大きく影を落としている。特に同社はサーバー部品や半導体において中国、台湾、韓国への依存度が高く、145%という高率の中国向け関税や、台湾・韓国への報復的措置の影響を直接受ける。現在は90日間の一時停止措置が取られているものの、再開されれば価格競争力や利益率に深刻な影響を与える可能性がある。これらの要因は株価形成の不確実性を高める主要因といえる。

さらに、トランプ前大統領が半導体を新たな関税対象とする方針を示していることも、HPEにとっては大きなリスクである。これまで半導体は関税適用外であったが、今後の政策変更次第では供給コストが跳ね上がる。HPE自身も決算説明会においてこうしたリスクを認めており、市場も3か月で約40%の株価下落という形で反応している。企業がサプライチェーンの再構築や地政学的対応に本腰を入れなければ、外部環境による業績の振れ幅は今後も継続する懸念がある。

アナリストの楽観評価とその裏にある期待と危うさ

複数のウォール街アナリストは、HPE株に対して「Moderate Buy(やや買い)」のレーティングを維持しており、平均目標株価は現在より30%以上高い約20ドルとされている。この評価は、Elliottによる経営関与がポジティブに作用するとの期待と、Juniper Networks買収が順調に完了すれば業績押し上げ効果があるとの前提に基づく。ただし、これらはいずれも前提条件が多く、実現性には不確実性が伴う。

株式市場は短期的な期待に敏感である一方、ファンダメンタルズを軽視した評価は後に反動を招くことがある。HPEは関税リスク、業績下方修正、M&Aの不透明性という三重の課題を抱えており、現時点での評価は楽観的過ぎる側面も否定できない。目標株価の上振れが現実の業績回復によって裏付けられるには時間がかかる可能性が高く、短期的な株価変動に安易に乗ることは慎重を要する。Elliottの動向や政府の政策変更が現実の数字にどう反映されるかを注視する必要がある。

Source: Barchart.com