HONORが中国市場で発表した新型スマートフォン「HONOR Power」は、8,000mAhのシリコンカーボンバッテリーを搭載しながらも、厚さ7.98mm・重量209gというスリムな筐体を実現した。エネルギー密度の高さを活かした設計で、動画25時間再生やゲーム14時間プレイといった長時間の使用が可能。

Snapdragon 7 Gen 3や北斗衛星通信への対応など性能も一定水準を満たしており、充電速度は66Wの有線でフル充電まで68分と高速。一方で、無線充電やハイエンド仕様には非対応であり、価格は231ドルからとコストパフォーマンス重視の戦略が見える。

スリムな筐体に詰め込まれた8,000mAh 常識を覆すバッテリー設計

HONOR Powerが搭載する8,000mAhのシリコンカーボンバッテリーは、物理的な制約を乗り越えた点で注目に値する。従来、これほどの容量を搭載したスマートフォンはバッテリー特化型の特殊モデルに限られていたが、本機は厚さ7.98mm・重さ209gという一般的なハイエンドモデルに近い設計に収めている。このスリムなデザインを可能にしたのが、高エネルギー密度を誇るシリコンカーボンセルである。リチウムイオンとの比較で、同一サイズでもより多くの電力を保持できるため、バッテリーサイズの拡大に頼らず長時間駆動を実現できた。

バッテリー性能においても、動画25時間再生やゲーム14時間プレイなどの数値が公表されており、実使用においても高い持続力が期待される。また、1,000回の充電後も80%の容量を維持するという寿命の長さは、長期使用を見越した設計といえる。ただし、この仕様がグローバルモデルに完全に踏襲されるかは不透明であり、一部市場ではバッテリー容量が抑えられる可能性も指摘されている。今後の展開が気になるところだ。

66W急速充電とワイヤレス非対応 高速化の一方で明確な割り切りも

HONOR Powerは66Wの有線急速充電に対応しており、3%から100%までのフル充電が68分で完了するという。一般的なスマートフォンの充電時間と比較してもかなり速い部類に入り、バッテリー容量の大きさを補ううえで合理的な設計といえる。ただしこの計測はバッテリー残量が0%ではなく3%から始まっているため、実際の充電時間は若干異なる可能性がある点には留意が必要である。また、ワイヤレス充電には非対応となっており、利便性を重視する層にとっては気になるポイントとなるだろう。

この仕様の背景には、コスト面や筐体の熱処理構造への影響といった技術的制約があると考えられる。特に8,000mAhという大容量にワイヤレス充電を組み合わせる場合、発熱や効率低下が顕著になることが予想される。そうした課題を回避し、確実に短時間で充電できる有線方式を優先した判断と捉えられる。一方で、日常的にワイヤレス充電を活用しているユーザーには明確な妥協点と映る可能性がある。

エントリースペックに通信強化 用途を選ぶ構成で差別化を狙う

内部仕様としては、SoCにSnapdragon 7 Gen 3を採用し、6.78インチの1.5K OLEDディスプレイや50MPメインカメラなど、全体としてエントリーモデル寄りのスペックにまとめられている。ディスプレイは120Hz駆動と3840HzのPWM調光に対応しており、滑らかさと目の負担軽減の両立が図られている。カメラ構成も高価格帯の多眼仕様には及ばないが、日常使用には十分な画質が期待される設計である。

特筆すべきは、独自のC1 Plus通信チップを搭載し、中国の北斗衛星通信に対応している点だ。これは一般的なスマートフォンでは珍しく、通信環境の弱い地域や災害時などにおいて有効な補完手段となりうる。ただし、グローバルモデルでもこの通信機能がそのまま利用できるかは不透明であり、各地域での対応状況によっては機能が制限される可能性がある。高性能ではないが、必要十分な性能と付加価値を両立した構成といえる。

Source:Android Authority