パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、イーロン・マスクが後援する米国税制機関改革プロジェクト「DOGE」と連携し、IRSの全データベースを統合管理する「メガAPI」構想の中核を担う存在として浮上している。AIを活用したFoundryプラットフォームの活用は、行政効率化の象徴とされる一方で、政府支出削減の波やバリュエーションの割高感が株価に影を落としている。

2024年の売上高は29億ドルに達し、政府依存から商業契約への転換も進むが、依然として時価総額に見合う成長軌道にあるかどうかは市場で分かれている。2025年以降、売上・利益ともに年30%以上の成長が見込まれるものの、20人中4人のアナリストが「強い売り」を提示するなど、投資判断は依然として賛否が分かれている。

マスク支援のDOGE構想とパランティアの関与が示す米政府のデジタル転換

パランティアは、イーロン・マスクが関与する「政府効率化省(Department of Government Efficiency=DOGE)」の枠組みのもと、IRSのデータベース統合を目指す大型プロジェクトに参加している。米国政府の税制機関であるIRSは、全国民の納税データを対象とした「メガAPI」の構築を視野に入れており、これにFoundryを中心とするパランティアの技術が活用される可能性が報じられている。

IRS、DOGE、パランティアによる3日間のハッカソン形式の協業は、技術者と行政組織の連携が現実の政策実装に直結し始めていることを示す事例といえる。

この構想が本格化すれば、従来の紙ベースや断片化されたシステムに依存してきた行政機能は、クラウドとAIによるリアルタイムデータ処理に移行することになる。ただし、税情報の一元管理が持つ社会的・法的影響への慎重な検討は不可欠である。パランティアは安全保障分野での信頼を背景に国家機関との連携を深化させてきたが、今後のプロジェクト進捗は、政治的支持や世論の動向に左右される余地も残されている。

パランティアの売上構造と顧客基盤が示す成長戦略の方向性

パランティアは2024年に29億ドルの売上高を記録し、そのうち55%が政府、残りの45%が商業部門からの収益であった。注目すべきは、2024年末時点で契約残高が前年から40%増の54億ドルに拡大し、とりわけ商業契約が47%増と政府部門を上回る成長率を示した点である。業種別では航空、保険、医療、自動車などへの展開が進み、特定の業界に偏らない多様な顧客基盤を確立しつつある。顧客数も711社に達し、上位20社からの平均売上は前年比18%増と関係の深化も進んでいる。

この商業分野へのシフトは、政府支出抑制の影響を受けにくい成長モデルへの転換を意識したものであり、同時にFoundryやAIPのような横断的な分析基盤の汎用性が追い風となっている。顧客が短期間で導入可能な「AIPブートキャンプ」などの仕組みも、導入障壁の低減に寄与している。一方で、今後も政府案件に高依存の体質が完全に払拭されるには時間を要するとみられ、バランスの取れたポートフォリオ構築が重要となる。

株価指標とアナリスト評価が示唆する投資家の期待と警戒感

パランティア株は過去最高値から24%下落しており、時価総額2,170億ドルに対する割高感が市場での懸念材料となっている。2025年から2030年にかけては年平均36%の利益成長が予測され、売上も同様に年30%以上のペースを維持する見込みとされる。

これは過去4年間の実績を大きく上回る成長曲線であり、成長期待に根拠があるとの見方も存在する。一方、アナリスト20名中12名が「ホールド」、4名が「強い売り」と評価し、楽観一色とはなっていない点が注目される。

平均目標株価は現在値より10%以上下回る84.53ドルと設定されており、一部では下落余地を意識した慎重なスタンスが根強い。確かにNvidiaなどと比較してもPER水準は割高とされ、特に成長期待の前倒しがすでに織り込まれている可能性がある。豊富な現金保有と無借金経営、リボルビング枠の存在など、財務的な余力は十分であるが、評価の修正には持続的な商業部門の拡大や利益率の改善が不可欠となる。投資家にとっては、短期的なボラティリティに留意しつつ、中長期の成長性を慎重に見極める局面といえる。

Source: Barchart.com