インディアナ州選出の共和党議員ジェファーソン・シュリーブが、関税政策の変動期に600万ドルを超える株式取引を行っていたことが公開資料により判明した。外交・インフラ関連の委員会に所属する同議員が取引対象としたのは、政策リスクと直結するMarvell TechnologyやHalliburtonの株式であり、損失回避のタイミングから内部情報の活用が疑われている。

注目すべきは、Apple株の購入が関税免除発表と重なっていた点や、航空・インフラ関連企業の選別的な売買である。これらの動きは単なる市場予測を超えた示唆を含むものと見られ、議会内での情報の私的利用が再び問題視されつつある。一方で、ポートフォリオ全体は長期保有を想定した構成にも見え、必ずしも短期的な利益追求には限定されないとの見方もある。

シュリーブ議員の取引詳細と委員会所属の関連性

インディアナ州第6選挙区選出のジェファーソン・シュリーブ議員は、2024年3月の1カ月間で600万ドルを超える取引を実施し、その報告内容が議会取引レーダーで明らかになった。外交委員会、交通インフラ委員会、航空小委員会、高速道路・交通小委員会、鉄道・パイプライン・危険物小委員会といった幅広い分野の委員会に所属する同議員が、政策リスクの高い銘柄を中心に売買を行った事実は注目を集めている。

Marvell TechnologyやHalliburtonといった外的要因の影響を受けやすい企業の株式を損失直前に売却したことで、大幅な下落を回避した動きが見受けられる。報告書には120件以上の取引が記載されており、その多くは15,001ドルから50,000ドルの範囲であった。加えて、Apple株の購入タイミングが電子機器に対する関税免除発表と合致した点も見逃せない。これらの動きには、委員会活動を通じて入手し得る政策情報や市場動向の影響が強く示唆されるが、実際の意思決定の背景や意図については外部から断定することは難しい。

損失回避とバイ・アンド・ホールド戦略の両面性

シュリーブ議員の売買履歴を見ると、短期的な損失回避の判断と、長期的なポートフォリオ形成という両側面が存在することが浮かび上がる。Marvell Technologyの株価は3月5日の売却後に90.14ドルから52.26ドルへと急落し、42.02%の損失を回避した。また、Halliburtonの売却でも同様に12.69%の下落を免れている。これらの事例からは、市場の急変を先読みした売買判断があったことが推測されるが、売却益の確定や損失回避のみを目的としたものとは断言できない。

一方、120件以上に及ぶ多様な銘柄への分散投資や、大半の取引が含み損状態である現状を踏まえれば、短期的な利益追求よりもバイ・アンド・ホールドを志向した戦略の可能性がある。Apple株購入に見られるような関税動向を反映したポジショニングは、今後の市況反発に備えた長期的視野に立った判断と捉えることもできる。

米議会内における情報利用の倫理と透明性

今回の取引が波紋を広げる背景には、米議会における情報の私的活用という根深い課題が存在する。政策決定や規制の現場に直接関与する立場での大規模な株式取引は、利益相反やインサイダー取引の疑惑を容易に生み出す構造的なリスクを孕んでいる。特に関税政策の不透明さや国際情勢の変化が市場に影響を与える中で、委員会メンバーが関連企業の株式を選択的に売買する事例は、外部から見れば公正性や透明性への疑念を強くする。

こうした動きに対し、市民や市場関係者からは議員取引の厳格な規制や情報開示の拡充を求める声が上がっている。一方で、議員自身が長期的な資産運用や多角的なリスク分散を念頭に置いている場合も否定できず、外形的な事実だけでは動機や意図を完全に明らかにすることはできない。米議会のガバナンスと市場の信頼性を巡る議論は、今後も続くと見込まれる。


Source: Finbold