Nvidia(NASDAQ: NVDA)は、年初からの株価下落とマクロ経済の逆風により一時的に評価を落としたが、4月14日に発表された米国でのスーパーコンピュータ製造強化計画とトランプ大統領の支援表明を背景に、再び第2四半期の注目銘柄として台頭した。量子コンピューティング分野の進展や、Yum! BrandsとのAI連携など、AI活用の地道な取り組みも評価材料となっている。

加えて、110ドル台にある現在の株価水準は過去高値から25%以上の調整後であり、5月28日の決算を前に反発の可能性を示唆している。ただし、国内工場の稼働時期や通商政策の影響は中期的な不確実性として残り、第3四半期以降の評価には慎重な見極めが必要である。

米国生産体制強化とトランプ支持により、Nvidiaは政策面での優位性を確保

Nvidiaは2025年4月14日、米国内でスーパーコンピュータを製造する生産拠点を確保する方針を打ち出し、関税環境が悪化する中での地政学的リスクに対抗する姿勢を鮮明にした。この動きに対し、ドナルド・トランプ大統領は同社への許認可手続きの迅速化を明言し、5,000億ドル規模の国内投資を支持すると発言している。さらに、「アメリカの黄金時代に参加する企業」への優遇政策として、同様の支援を他社にも拡大する可能性を示唆した。この支援は、政府とNvidiaの利害が一致する象徴的な出来事として、市場に政策的安定を与えている。

生産拠点の国内回帰は、対中関係の不確実性やサプライチェーン分断のリスクを回避するうえで重要な転換点となり得る。ただし、2つの新設工場は稼働までに12〜15か月を要する見通しであり、第2四半期中に業績へ直接寄与する可能性は乏しい。一方、トランプ政権との協調が維持されれば、今後の政府支援策の恩恵を中長期的に享受する土台となる。Nvidiaが地政学的リスクを逆手に取り、国内製造を通じて成長ストーリーを描けるかは、その実行力にかかっている。

 

Yum! BrandsとのAI提携により、Nvidiaは非半導体分野でのプレゼンスを拡大

2025年3月、NvidiaはYum! Brands(NYSE: YUM)と提携し、KFCやタコベル、ピザハットなどの注文受付業務にAIを活用する取り組みを開始した。これは、GPUベースの高性能AIモデルを活用し、ファストフード業界におけるオペレーションの効率化とユーザー体験の向上を目的としている。Nvidiaは従来、半導体分野に強みを持つ企業であったが、本提携は垂直統合型のAIサービス企業としての方向性を強く印象付けるものである。

飲食業界との協業は、AIの社会実装が実務レベルで進行していることを象徴している。同時に、ハードウェアにとどまらずソリューション提供を目指すNvidiaの戦略的転換を反映している。これは不安定な半導体サイクルに対する収益源の分散化を意味しており、長期的に評価される可能性がある。ただし、現段階では財務インパクトが限定的であり、投資判断においては将来の成長性と現実の収益貢献を慎重に見極める必要がある。今後、他業種との連携が広がるかが中長期の焦点となる。

 

株価調整局面が再評価の契機に 決算発表は重要な転換点に

2025年初からの市場の混乱により、Nvidia株(NVDA)は1月6日の149.43ドルから25.85%下落し、4月時点で110.80ドルまで調整している。この下落幅は、評価額の過熱感やマクロ的逆風を背景とするものであったが、現在の株価はバリュエーションの面で一定の割安感を提供している。5月28日に予定されている2025年第1四半期の決算発表は、今後の株価動向を大きく左右する分岐点となる見通しである。

市場では、年初の経済指標や貿易摩擦の影響が同四半期業績にどの程度影響を及ぼしたかに注目が集まっている。報道では、実際の業績が市場の懸念よりも堅調である可能性も指摘されており、決算が予想を上回る内容となれば短期的な反発の引き金になり得る。とはいえ、関税政策や国際競合の動向が依然として重石となっており、持続的な上昇には業績の裏付けが不可欠である。株価の一時的な割安感に飛びつくのではなく、長期的な収益成長の確度を見極める冷静な視座が求められる。

Source: Finbold