テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は、50日移動平均線が200日線を下回る「デスクロス」の発生により、中長期的な下落局面入りの可能性が浮上している。終値252ドルと両平均線を割り込み、昨年2月以来の弱気シグナルが再点灯した格好である。テクニカル面に加え、EV需要の減速や競合企業の台頭といったファンダメンタルズの悪化も重なり、投資家心理は冷え込みつつある。
第1四半期納車台数は前年同期比13%減、さらに関税不安と価格競争による利益圧迫が続く中で、次回決算発表への期待は限定的と見られる。一方、RBCキャピタルのアナリストは依然として目標株価314ドルを提示し、反転材料として新型車やロボタクシー構想を挙げているが、下落リスクの台頭がこれを上回るとの見方も否定できない。
デスクロスの形成と移動平均線割れが示すテクニカル的弱気サイン

テスラ株(NASDAQ: TSLA)は2025年4月時点で、50日移動平均線が200日移動平均線を下回る「デスクロス」を形成し、テクニカル分析上の明確な弱気サインが点灯した。252ドルで引けた同株は、両移動平均線を下回っており、上値抵抗としての200日線(約255ドル)の突破に失敗している点も、市場の懸念を深めている。過去の類似事例として、2024年2月に発生した同様のパターンの後、テスラ株は数週間で25%以上の下落を記録しており、市場参加者の警戒感は強まっている。
また、現在の水準から下方にある200〜210ドルのゾーンが次の需要エリアとして意識されており、これを下抜けた場合には下落トレンドの加速が視野に入る。とりわけ3月安値の222ドルを下回った場合、市場心理に与える影響は大きく、テクニカル的な売りが一段と進行する構図となる。50日線と200日線の位置関係が示すモメンタムの低下に加え、マクロ環境の不透明感がテスラ株にとって下押し圧力となっている。
ただし、デスクロスはあくまで過去の価格行動に基づく遅行指標であり、必ずしも今後の動きを断定するものではない点は留意が必要である。とはいえ、現段階における移動平均線の動向と株価水準の乖離は、テスラ株の中長期的なセンチメントの冷え込みを象徴しているといえる。
EV市場の競争激化とテスラの基礎的課題
2025年に入り、テスラのEV需要は明確に減速しており、市場構造の変化が同社にとって逆風となっている。特にLucid(NASDAQ: LCID)などの新興競合企業への需要流出が続き、テスラのブランド優位性は相対的に低下傾向にある。消費者の嗜好変化に加え、イーロン・マスクCEOの政治的発言が一部層の支持離れを招いている可能性も無視できない。また、中国メーカーとの価格競争が激化する中で、テスラは継続的な値下げ戦略を取っており、利益率の悪化が懸念される状況となっている。
第1四半期の納車台数が前年同期比13%減、かつウォール街の予想を4万台下回ったことは、市場が抱える不信感を裏付けている。今後の業績発表において、好材料の提示がなければ投資家の見切り売りを誘発しかねない。これに対し、RBCのトム・ナラヤン氏はテスラに対して目標株価314ドルを維持し、ロボタクシー構想や低価格モデルの投入を上昇要因と見ているが、その影響が短期的に顕在化する保証はない。
収益構造の安定性や新製品戦略の実行力が問われる中で、テスラはこれまでの成長期待を維持できるかどうかの重要な転換点に差し掛かっている。EV市場全体の供給過多や政策動向も含め、テスラのファンダメンタルズに対する厳格な見極めが必要とされている。
Source: Finbold