Intelが開発中のPコアのみで構成される新型CPU「Bartlett Lake-S」が、Linuxカーネルパッチにより正式に識別対象となった。このプロセッサはRaptor Coveアーキテクチャを採用し、最大12コア・24スレッドの構成が見込まれている。LGA1700ソケット対応で、既存の600/700シリーズマザーボードでも利用可能とされる。
AVX-512命令セットの再有効化や、ゲーム性能向上の可能性などが示唆される一方で、電力効率面での懸念やRyzen 9000シリーズとの競合優位性には依然不透明な点が残る。製品は組み込み向け中心に展開されており、一般向け展開や詳細発表は今後のComputexでの動向に注目が集まる。
Pコア専用構成による設計方針とソフトウェア最適化の進展

Intelが開発を進める「Bartlett Lake-S」は、最大12基のRaptor Coveベースのパフォーマンスコア(Pコア)のみで構成されるプロセッサであり、従来のハイブリッド型とは異なる設計思想を示している。
最新のLinuxカーネルパッチでは、このBartlett LakeのCPUIDが新たに登録され、モデル番号「0xD7」として正式に識別されるようになった。これにより、Linux OS上での起動時認識が可能となり、コンパイラによるCPU最適化処理やハードウェア固有コードの適用が加速する見通しである。
また、このCPUはCESで発表されたNEXプラットフォーム向けの製品群に含まれており、組み込み向け用途を中心に展開されるとの方向性が示唆された。
対応ソケットはLGA1700とされ、BIOSの更新により第12世代以降の600番台および700番台チップセット搭載マザーボードでの運用が想定されている点も実装面での利点となる。現行のRaptor Lakeダイは最大8Pコアまでに制限されているため、12Pコア構成には新規ダイ設計が必要となる可能性があり、物理構造の刷新が進んでいることを示唆する。
単一コア構成の利点とAVX-512復活の可能性
Pコアのみで構成される「Bartlett Lake-S」は、従来のハイブリッド構成に起因していたタスクスケジューリングの複雑性を排除し、OSやアプリケーションによる処理の整合性を高める可能性がある。
とりわけ、AVX-512命令セットについては、Alder Lake世代以降でPコア専用構成でも無効化されていたが、今回のBartlett Lakeではその再有効化が可能となる設計である可能性が取り沙汰されている。AVX-512の復活は、科学技術計算やエンジニアリング用途において性能向上をもたらす要因となり得る。
もっとも、この構成が持つ電力効率の面では懸念も残る。Eコアを排した設計は、省電力性を犠牲にする可能性があり、Arrow Lakeのような次世代ハイブリッドアーキテクチャと比較した際の競争力には不透明な要素が多い。
ただし、ゲーミング用途においては、複雑なスケジューリングが回避されることでパフォーマンスが安定し、一定のユーザー層にとっては魅力的な選択肢となる可能性もある。市場投入時期は2025年第3四半期が想定されており、Computexでの続報に注視が必要である。
Source:Tom’s Hardware