Acerは、RTX 5060の発売にあわせて、新型ゲーミングPCシリーズ「Nitro AI」ノートPCと「Nitro 20」デスクトップPCを発表した。全モデルにAMD Ryzen AIプロセッサとNVIDIA RTX 50シリーズGPUを搭載し、AI処理性能に特化。

ノートPCは16インチから18インチの4モデルが用意され、最高で165Hz・WQXGA表示、32GB DDR5メモリ、最大2TB SSD対応の拡張性を誇る。デスクトップ「Nitro 20」は省スペース設計ながらRTX 5060を搭載可能で、指紋認証機能付き。いずれの製品もヨーロッパ市場において、7月から8月にかけて段階的に発売され、価格は899ユーロからとされている。

Ryzen AIとRTX 50シリーズがもたらす実用性能の進化

Acerの新型Nitroシリーズは、AMD Ryzen AI 300シリーズとNVIDIA GeForce RTX 50シリーズを中核に据えることで、従来のゲーミング性能を土台に、AI処理能力を大幅に高めている。MicrosoftのCopilot+ PC要件を満たす40 TOPS以上のNPU性能を標準搭載し、AI機能の常時稼働を実現している点が注目に値する。

これにより、ゲームのみならず生成系AIや画像処理、リアルタイム翻訳など、多様な用途への拡張が可能となる。特に、最上位モデル「Nitro 18 AI(AN18-61)」は2560×1600の高解像度と165Hzリフレッシュレートを併せ持ち、ハイエンドゲーマーやクリエイティブユーザーの要求に応える設計となっている。

冷却面でも液体金属グリスと4方向通気機構を採用し、長時間の高負荷作業に対応可能である。事実、RTX 5070を組み合わせることでTOPS値は飛躍的に向上し、NPUとGPUによるAI負荷の分散処理が実用水準に到達したといえる。

この構成は、単なる高性能化ではなく、ノートPC領域での「AIネイティブ化」への布石と解釈できる。AI推論処理が日常化しつつある現在、CPU・NPU・GPUの三位一体設計が性能評価の新たな軸となりつつある。Nitroシリーズはその潮流を明確に体現した製品群であり、特にゲーミングとクリエイティブ用途を同時にカバーする点で、将来的な需要を先取りしている構造といえるだろう。

ユーザー層を拡張する製品設計と価格戦略

Nitroシリーズは、従来のハイエンドゲーマー層に加え、AIワークロードや携帯性を求める新たなユーザー層への拡張を狙った多層的な製品展開が特徴的である。たとえば、「Nitro 16 AI」や「Nitro 16S AI」はWQXGA解像度と180Hzの高速リフレッシュレートを備え、筐体の厚みを19.9mm未満に抑えたスリム設計が際立つ。

一方で、コスト重視の「Nitro V 16S AI」はAI性能を維持しながらも価格を1299ユーロに設定し、購入層の裾野を広げている。さらに、Nitro 20デスクトップPCでは、Ryzen AI 9 365とIntel Core i5-13420Hから選択可能な柔軟性と、指紋認証付きの前面電源ボタンといったユニークな設計が付加価値を提供している。

こうした製品戦略は、性能と価格の両軸を巧みに調整することで、ゲーミングPC市場における中間層の取り込みを意図したものであると考えられる。

特にヨーロッパ市場での899ユーロからという価格帯設定は、RTX 5060の登場に合わせた市場浸透戦略と一致しており、AI機能を含むハイパフォーマンス機種の普及加速を狙った動きと解釈できる。製品構成においても、最大32GB DDR5メモリ、PCIe Gen 4 SSDスロット、Wi-Fi 6Eといった現行最高水準の要素を余すことなく搭載し、価格以上の機能性を保証している点も注視すべきポイントである。

Source:KitGuru