AMDは次世代サーバー向けCPU「EPYC Venice」が、TSMCの最新2nmプロセス「N2」を採用した初のHPC製品となることを明らかにした。これは、最先端アーキテクチャと製造技術の融合を象徴する成果であり、米アリゾナ州の新設ファブにおける実装成功とも連動する。

TSMCとの緊密な連携により、AMDは高性能・省電力の両立に挑むZen 6世代を実現。同社CEOリサ・スー氏は、本開発が今後の次世代計算基盤の礎になると強調した。AMDの戦略は、技術革新と地政学的製造拠点の分散に対応する一手とも捉えられる。

TSMC側も、AMDを2nmおよび米国内製造における主要顧客と明言し、両社のパートナーシップが今後の半導体業界に広範な影響を与える可能性があるとする見解を示している。

TSMCの2nmプロセスを採用したEPYC Veniceの位置づけと製造背景

AMDは、サーバー向け次世代CPUであるEPYC Veniceを、TSMCの最新N2プロセスを用いて製造した初のHPCチップとして位置づけている。

従来の5nmプロセスからさらに微細化が進んだ2nm技術は、トランジスタ密度の向上に加え、電力効率と性能のバランスを高度に最適化できるとされている。今回のVenice世代では、Zen 6アーキテクチャとの組み合わせにより、HPC用途で求められる大規模演算と高スループットへの対応が視野に入る構成となった。

この開発には、米国アリゾナ州に設置されたTSMCの新たな製造施設「Fab 21」が関与しており、AMDは同工場での立ち上げと検証作業の成功も併せて強調している。リサ・スーCEOは、AMDがTSMCと長年にわたり築いてきた深い協力体制が、今回の成果を支えていると語り、製造技術と製品設計の両面での緊密な最適化の重要性を強調している。

AMDがVeniceで初めてTSMCの2nmを採用した背景には、次世代HPCの競争において先手を打つ意図があると考えられる。プロセス移行には高コストと設計上のハードルが伴うが、それを受け入れても先進プロセスによる優位性を重視する姿勢は、他社との差別化を図る上で戦略的な意味を持つ。

製造地の多様化と米国製造強化がもたらす地政学的意義

AMDがTSMCのアリゾナ州Fab 21を活用し、EPYC Veniceの製造と立ち上げを米国内で行ったことは、単なる技術面の進歩に留まらない。

米中関係の不確実性やサプライチェーンリスクの高まりを背景に、半導体産業では製造地の多極化が急務とされており、今回の取り組みはその潮流に即したものである。AMDは公式に、米国製造への「コミットメント」を明言しており、国家的な技術自立への貢献も視野に入っている。

これは同時に、TSMCが台湾外での量産実績を本格化させる初期事例の一つともなる。ウェイCEOの発言からも、Fab 21が先端プロセスのグローバル展開における中核拠点として認識されていることがうかがえる。2nmクラスの微細プロセスが米国内で展開される意義は、エネルギー効率や製品性能だけでなく、戦略的備蓄や供給安定性の観点からも極めて大きい。

ただし、製造コストや立ち上げ難度の点では、台湾拠点に比べ依然として課題が残るとみられる。今後の量産体制や歩留まり次第では、米国内製造の優位性が確立されるまでには時間を要する可能性も否定できない。それでもAMDがFab 21での生産に踏み切った点は、製造と技術の主導権を地政学的に分散させようとする現代の半導体戦略を象徴するものである。

Source:TweakTown