GoogleがPixelシリーズで先行導入した盗難防止機能「Identity Check」が、Android 16の展開に伴い他のOEM端末にも波及する可能性が出てきた。この機能は、信頼できない場所で端末設定やアカウント変更を行おうとすると、指紋や顔認証といった生体認証を必須とすることで、不正利用のリスクを低減する仕組み。
既にOnePlus 13のAndroid 16ベータ2で動作が確認されており、OSの中核コードを必要とする性質から、Android 16を契機に複数メーカーへの正式採用が進むと見られている。
Pixel発の「Identity Check」がAndroid 16で他社製端末に拡大へ

Googleが2025年1月にPixel端末向けに導入した盗難防止機能「Identity Check」は、Android 16ベータ版を通じて他のメーカー端末にも搭載され始めている。OnePlus 13のAndroid 16ベータ2でこの機能の存在が確認されたことで、今後より多くのOEMがこの機能を採用する兆しが出てきた。Identity Checkは、信頼できない場所や状況でセキュリティ設定やアカウントへのアクセスを試みた際に、生体認証を必ず求める設計となっている。パスワードやPINの漏洩リスクに備える対策として、PixelではすでにAndroid 15 QPR1で実装済みであり、SamsungもOne UI 7でこれを採用している。Android 16は、これら既存のQPRアップデートでの変更をすべて包含するため、他社がこの仕組みを取り込むハードルは低くなっている。
一方で、Identity Checkの実装にはOSの深部である生体認証プロンプトの構造変更が必要となるため、単純なアプリのアップデートでは対応できない。そのため、Android 16のような主要OSアップデートを通じた提供が必須となる点も特筆すべきである。この構造上の要件が、今回の機能拡大の背景にある。Android AuthorityやMishaal Rahman氏の報告も踏まえると、Googleが意図的にこの機能を次期OSでの新たな標準と位置づけている可能性は否定できない。
生体認証必須化が変えるセキュリティ操作の常識
「Identity Check」が特徴的なのは、従来のPINやパターンに加えて、生体認証を強制的に求める点である。これまで、ロック解除後の端末は、一定の操作に対して再認証を求めることなくアクセスできるケースが多かった。しかしこの仕組みでは、セキュリティ設定の変更やアカウントの切り替えといったセンシティブな操作を行おうとするたびに、ユーザーの指紋や顔認証を求める仕様となっている。特に「自宅以外」など、信頼されていない環境での使用時にこの機能が発動することで、端末が物理的に奪われた後の被害を最小限にとどめられる仕組みとなっている。
このような仕様は、特定アプリだけでなく、OSレベルでシステム的に組み込まれることで実現している点が重要である。つまり、Android 16のようなシステム更新を伴わなければ本質的な導入は難しいということだ。機能としては一見シンプルながらも、OSのセキュリティ哲学自体に変化を促すアプローチであるとも言える。これにより、日常の操作性とセキュリティとのバランスが再定義される契機となるかもしれない。
拡大採用の鍵を握るのはOEMとGoogleの協調
Identity Checkの拡大において鍵となるのは、GoogleとOEM各社との連携である。この機能はAndroidの基盤部分に手を加える必要があるため、各OEMが独自に手を加えるのではなく、Googleが提供する共通コードを各社が採用する必要がある。PixelやSamsungのように、すでにGoogleと連携した深いカスタマイズを行っているメーカーであれば実装は比較的スムーズに進むが、そうでない企業にとっては技術的・運用的なハードルが存在する。
今回のAndroid 16への統合が示すのは、Googleがこうしたセキュリティ機能をAndroidの標準機能として確立させようとしている姿勢である。特定のブランド専用の機能から、プラットフォーム全体の基本機能へと進化させる段階に入っていると考えられる。とはいえ、全OEMが一様にこれを採用するとは限らず、導入タイミングや対応機種の選定など、各社の判断によって今後の普及速度には差が生じる可能性がある。Googleがこの機能を「推奨仕様」として提示するかどうかが、今後の分水嶺となるだろう。
Source:Android Police