Nvidiaは、RTX 5060 Tiを含むRTX 50および40シリーズGPUに対応した新ドライバ「576.02」をリリースし、ブラックスクリーンやクラッシュなど40件に及ぶ深刻な不具合を修正した。VSyncやDLSS 4、Smooth Motionなど最新機能との整合性を図ると同時に、『The Last of Us Part 1』など一部タイトルでのクラッシュ問題も解消された。特にDisplayPort 2.1関連や旧ドライバに起因するシステムハング、HDR再生時のブラックアウトといった安定性の根幹に関わるバグに対し、多面的かつ包括的な対応が施された点は注目に値する。

これらの修正は、ドライバ572系で浮上していた構造的な安定性の欠如に対する明確な是正措置と見ることができ、ユーザーが過去バージョンへのロールバックを余儀なくされる状況に終止符を打つ可能性がある。ただし、ドライバアップデートによる安定性回復が全GPU環境で一律に機能するかについては、今後の実運用における慎重な検証が求められる。

RTX 50シリーズを中心に40件の不具合を修正 Nvidiaが576.02ドライバを配信

Nvidiaは最新ドライバ「576.02」を発表し、RTX 5060 Tiを含むRTX 50およびRTX 40シリーズにおける重大な不具合40件を一括修正した。今回のアップデートでは、VSync使用時のカクつき、DLSS 4のマルチフレーム生成における異常、Smooth Motion対応タイトルでのクラッシュなど、ゲーム体験に直結する技術的障害が多数取り除かれた。

特に『The Last of Us Part 1』や『Hellblade 2: Senua’s Saga』におけるクラッシュは、DLSS関連機能との競合に起因しており、ユーザーからの信頼を大きく損なっていた事例と位置づけられる。また、DisplayPort 2.1経由で発生していたモニター出力の不安定性や、LG製モニター利用時のリンクレート異常など、ハードウェア接続に関わる不具合も対象となっている。

この修正内容は、旧ドライバ572系で顕在化した根深い安定性の欠如に対するNvidiaの包括的な対応と評価される。ただし、特定GPU環境における再現性が高かった一部不具合の改善が実際の運用下でどこまで反映されるかは未知数であり、安定版としての評価を確定するにはさらなるフィードバックの集積が必要である。今回のドライバ改善は、NvidiaがRTX 50シリーズを本格普及させるための土台づくりと見なすべきであり、実質的な信頼回復の起点に過ぎない。

ドライバ不具合が招いたユーザーの信頼低下と開発現場への影響

576.02ドライバに至るまでの経緯において、Nvidiaの過去の対応が大きな批判にさらされた。ドライバ572.16を含む旧バージョンでは、システムのハードハングやWindows起動時のブラックスクリーンが報告され、特にDisplayPort出力利用時の障害が顕著であった。

また、3D Mark実行中にブラックアウトが発生する事象や、DLSS 4との非互換によるクラッシュが複数タイトルで観測され、ゲーム開発現場では開発版の動作検証そのものが不安定化する事態に陥った。これを受け、一部開発者がドライバ566系へのロールバックを公式に推奨するなど、現場の混乱が表面化した。

このような技術的不具合が積み重なった結果、RTX 50シリーズは一時的に「実用に耐えないGPU」として扱われる局面も見られ、Nvidiaのブランド力は揺らいだといえる。今回の修正群は、影響を被ったユーザーコミュニティおよび開発関係者に対する最低限の応答と捉えるべきであり、長期的な信頼回復のためには、次期ドライバ展開におけるテスト体制の透明性や、障害発生時の初動対応に関する改善が不可欠となる。ユーザー環境の多様性に対応した運用ベースの品質検証が今後の鍵を握る。

RTX 5060 Tiの正式対応とDLSSアップデートによる製品戦略の布石

今回の576.02ドライバには、新たに投入されたRTX 5060 Ti(16GBおよび8GB)の正式サポートも含まれており、Nvidiaが下位モデル市場への本格参入を進める動きが見て取れる。同時に、『Black Myth: Wukong』『No More Room In Hell』といったDLSS 4対応タイトルに対するマルチフレーム生成のサポート追加や、G-Sync互換ディスプレイ19種の新規認証も行われた。これにより、低価格帯ユーザー層に対してもDLSS 4の恩恵を広げ、AIベースのフレーム生成技術の普及を図る意図が明確となった。

特筆すべきは、RTX 50シリーズの価格訴求力を強化しつつも、高度なレンダリング補完技術を標準搭載する構成とした点であり、ハイエンドとローエンドを繋ぐ戦略的製品配置が進められていることである。ただし、性能が最大限に発揮されるためにはドライバの成熟が不可欠であり、今回の改善が初期評価の覆しにつながるかどうかは慎重な検証を要する。市場の受容性を見極める上で、RTX 5060 Tiのユーザー体験が今後の製品開発の方向性を左右する重要な指標となるだろう。

Source:Tom’s Hardware