AMDが5月に新型GPU「RX 9060 XT」を投入するとの噂が中国フォーラム「Chiphell」や情報リーカーHarukaze5719氏の発信から浮上している。Computex 2025での発表も視野に入れたスケジュールとされ、対抗馬は同時期に登場予定のNvidia「RTX 5060」である。
噂されるスペックは16GBと8GBのGDDR6モデルが存在し、「RX 9070 XT」の性能の約6割程度と推測されているが、価格が249~299ドルと競争力のある水準に設定されれば、主に価格重視層に強く訴求する可能性がある。一方で8GB版の将来的な実用性には疑問がつきまとい、性能への失望感も払拭しきれない。
低価格戦略を加速させるNvidiaの動向に対抗すべく、AMDが本機をどのタイミング、どの価格で投入するかが下位ミドルレンジ市場における勝敗を大きく左右することになりそうだ。
RX 9060 XTのスペック構成と市場戦略にみる競争上の意図

AMDが5月に投入を予定しているとされる「RX 9060 XT」は、16GBと8GBのGDDR6モデルで構成され、既存の上位モデル「RX 9070 XT」と比較して約60%の性能水準とされる。スペックの差異は、グラフィックスコアとメモリ帯域幅が半分である一方、ブーストクロックはわずかに上回るという設計上のバランスが示唆されている。また、「RX 7700 XT」よりやや低いフレームレートが予測されており、性能的にはミドルレンジ下層を担うことが想定される。
この構成からは、AMDが上位モデルとの差別化を維持しつつ、Nvidia「RTX 5060」への価格対抗を意図していることがうかがえる。特にVRAM容量が市場に与える印象は強く、昨今のゲームやアプリケーションの要求水準を考慮すると、8GB版に対しては慎重な視線が注がれるのは避けられない。かつてNvidia「RTX 4060」シリーズが類似の構成で批判を受けた事例を鑑みれば、AMDのこの判断は極めて繊細な選択であるといえる。
一方、8GBモデルの存在自体が標準型「RX 9060」の不在と関連している可能性がある点も注目すべきである。仮に8GB版が廉価モデルの代替として導入されるならば、製品ポジションの明確化が急務となる。性能・価格・将来性という三点のバランスが、消費者の選好を大きく左右する構図となるだろう。
Nvidiaの価格政策に対抗するAMDの投入時期と価格設定の焦点
Nvidiaが4月に投入した「RTX 5060 Ti」に続き、「RTX 5060」も5月中に登場予定とされており、価格は299ドルと報じられている。この動きに対抗するかたちで、AMDが「RX 9060 XT」を5月後半のComputexに合わせて発表する可能性があると複数の情報源が示唆している。公式には「第2四半期中」としか言及されていないが、実際に市場投入するには5月が現実的なタイミングといえる。
Nvidiaが「Lovelace」世代よりも価格を下げたことで、AMDも価格競争に巻き込まれる格好となっており、特に16GB版が299ドル、8GB版が249ドルというChiphellの報告は注目に値する。ただしこの価格水準は市場にとって好都合である反面、過度に楽観的との指摘も存在し、実売価格では10〜20%の上昇も想定される状況にある。さらに、為替変動や関税、サプライチェーンの混乱といった不確定要素が絡む現状において、計画通りの価格展開が実現するかどうかは見通せない。
価格政策が本製品の市場評価を大きく左右することは間違いなく、特に価格に敏感な層に向けては、250ドル台での投入が極めて重要な要素となる。AMDが出遅れた印象を払拭するには、性能以上に価格の魅力を強調する戦略が不可欠である。タイミングと価格という二重の鍵を的確に握れるかが、今回の競争の帰趨を決定づけるだろう。
Source:TechRadar