AMDの次世代GPU「RX 9060 XT」が、RTX 4060 Tiを上回る性能と積極的な価格設定を武器に、2025年第2四半期に投入される見込みである。Moore’s Law Is Deadの情報によれば、同製品は32CU構成、GDDR6メモリ最大16GBを搭載し、RX 7600 XT比で最大40%の性能向上が期待されている。TDPは150〜200Wと高めであるが、価格は8GBモデルで269ドルから、16GBモデルでも379ドルに抑えられる可能性がある。また、RTX 5060シリーズとの競合においては、性能面での優位性と価格帯の重複が大きな武器となる。

一方で、供給体制には不透明さも残る。MLIDによれば、上位モデルよりは安定供給が見込まれるが、初期需要を満たすにはやや不十分との懸念も存在する。非XTモデルの開発が中止されたことで、RX 9060 XTが本シリーズ唯一の下位ミドルレンジ製品として位置づけられる可能性が高い。現状では、性能対価格比においてこの製品が下位セグメントで注目の中心となるかは、発売後の実測と市場動向次第となろう。

RTX 4060 Tiを超えるとされるRX 9060 XTの性能仕様と市場投入計画

Moore’s Law Is Deadが報じた情報によれば、AMDは2025年第2四半期に新たなエントリーミドルレンジGPU「RX 9060 XT」の市場投入を計画しており、その仕様と性能に関する詳細が明らかとなった。RX 9060 XTはRDNA 4アーキテクチャに基づき、32基のCU(Compute Unit)、128ビットのメモリバス、最大16GBのGDDR6 VRAMを備え、メモリ帯域は最大20Gbpsに達する見込みである。消費電力は150〜200Wとされ、同価格帯の競合製品であるRTX 5060の145Wを上回るが、既存のRX 7600 XT(190W)とほぼ同等水準にとどまる。

性能面では、RX 9060 XTはRTX 4060 Tiを上回り、RX 7700 XTには届かないとの予測がなされている。TechPowerUpのデータに基づけば、RX 7600 XTからの性能向上幅は20〜40%に及ぶ可能性があり、これは価格帯を考慮した際にきわめて競争力の高い水準といえる。ただし、これらは最終製品のベンチマークによる裏付けがない段階のものであり、実測との乖離には留意が必要である。

AMDは今回、従来の「無印」RX 9060の投入を見送り、XTモデル単独での展開を選択したとされている。この決定により、RX 9060 XTはRDNA 4の下位ミドルレンジ市場における中核製品としての役割を果たすこととなり、特にRTX 5060および同Tiモデルとの直接競合において注目される立ち位置にある。性能と仕様のバランスに加え、実売段階での供給体制が今後の評価を大きく左右すると考えられる。

価格戦略の転換と市場セグメント支配に向けたAMDの布石

価格設定に関しては、MLIDの報道をもとにした推計では、RX 9060 XTの8GBモデルが269〜299ドル、16GBモデルが329〜379ドルに設定される可能性がある。これは、現在市場にあるRX 7600 XT(329ドル)およびRTX 5060(299ドル)と比較しても戦略的な水準といえる。特に、16GBモデルがRTX 5060 Ti(329ドルから)と競合する価格帯に配置される点は注目に値する。容量別の価格差が比較的明確であるため、用途に応じた購入選択肢が拡がる設計となっている。

この価格構成は、コストパフォーマンスに敏感な層を主な対象とするエントリー〜ミドル市場において強力な武器となると考えられる。とりわけ、性能とメモリ容量の両面で上回る可能性があるRX 9060 XTが、RTX 5060 Tiとほぼ同等の価格で投入されるとすれば、NVIDIA製品の価格優位性は大きく揺らぐだろう。ただし、消費電力の高さと供給体制の不確実性は、導入初期のユーザー評価に影響を及ぼす要素となる。

また、AMDが無印モデルを回避し、XTモデル一本に絞ったことは、販売戦略上の明確な方針転換を示唆する。過去の製品群に見られた多モデル展開による差別化ではなく、単一製品でコストと性能の最適解を狙う構成は、供給リスクの抑制や流通効率の向上にもつながる可能性がある。こうした簡素化は、価格主導の市場支配を志向するAMDの中期戦略の一端をなすものと考えられる。

Source:NotebookCheck