Metaが反トラスト法裁判で提出したスライドに対し、Apple、Google、Snapの法務担当が一斉に抗議の声を上げた。墨消し処理が甘く、機密情報が容易に判読できる状態だったことが判明し、Appleは「極めて重大」と断じた上で、Metaへの情報提供そのものに疑念を示した。

Snapの弁護士もMetaの対応を「無頓着」と批判し、自社データが軽視された可能性に懸念を表明。Meta側は第三者による墨消しを提案したが、Googleを含む他社の信頼は大きく揺らいでいる。問題となった資料には競合分析やユーザー傾向などが含まれていたが、その内容以上に、他社機密の扱いをめぐるMetaの姿勢が問われている。

不完全な墨消しが露呈した裁判資料の中身と他社の反応

Metaが米連邦取引委員会(FTC)との反トラスト法訴訟で提出したスライドには、AppleやSnap、Googleといった競合他社の内部情報が含まれていた。その情報は墨消しされた状態で提出されたが、報道によれば、その処理は非常にずさんで、閲覧ソフトなどを用いれば簡単に中身が判読できるものだった。

Snapの弁護士は、「自社データだったらMetaはもっと丁寧に扱ったのではないか」と疑問を投げかけ、Metaの姿勢を厳しく非難した。問題のスライドには、「iPhoneユーザーはMetaやSnapのアプリよりAppleのメッセージアプリを好む傾向がある」といった記述や、「Snapchat in 2020: Competitors Are Succeeding and Not Just Meta Apps」と題された競争状況の分析が含まれていたとされる。

これらの内容そのものはセンセーショナルなものではなかったが、情報の扱い方が企業間の信頼関係に深刻な影響を及ぼした。特にAppleの弁護士は、この件を「極めて重大」と表現し、Metaに対する情報提供のあり方に根本的な再考を迫られる事態となっている。

第三者による墨消し作業の導入をMeta側は提案したが、今回の失態が企業の法務体制の根幹に疑念を抱かせることとなったのは間違いない。データの重要性がかつてなく増す中で、墨消しという一見技術的な手続きの不備が、企業間競争における倫理と信頼を揺るがす象徴となった。

信頼の損失が意味する競争環境の変化と長期的影響

今回のMetaによる墨消し不備が示すのは、単なる法務手続き上のミスにとどまらず、他社が持つ「機密の共有」という前提そのものを根底から揺るがすリスクである。SnapやGoogle、Appleの法務担当が一斉に反発した背景には、今後の法廷や規制当局との関係性において、情報開示の在り方が再定義されかねないという危機感がある。

競合企業同士が訴訟の場であっても最低限の信頼の上に成り立ってきたが、その基盤が大きく揺らいだ。MetaのHansen弁護士が、「SnapはFTCと協力している」と述べて情報共有を正当化した点も注目に値する。

企業同士の対立構造だけでなく、規制当局との力学が裁判の場に持ち込まれたことは、技術企業間の競争がもはやビジネスの枠を超え、政治的・制度的な駆け引きの中で繰り広げられていることを示唆している。今回の件で、他社は今後の情報提供により慎重になる可能性が高く、Metaのような巨大プラットフォーマーへの信頼回復には相当の時間と行動が必要になる。

また、このような事例が繰り返されれば、機密情報のやり取りそのものを避ける風潮が生まれ、訴訟や規制対応が形骸化する懸念も否定できない。企業は透明性と慎重さのバランスを問われており、Metaが今後どのように信頼再構築を図るかが、同業他社の姿勢にも影響を及ぼすことになるだろう。

Source:The Verge