パランティア・テクノロジーズは、NATOとのAI戦場認識プラットフォーム「MSS NATO」に関する契約締結により、欧州全体における防衛技術の中核企業としての地位を確立した。この動きは、同社が米軍との関係を基盤に築き上げた技術的信頼を国際舞台へ拡張したものである。
株価は契約発表と同時に4.6%上昇し、年初来の上昇率を20%に押し上げたが、依然として高いPER285倍やPSR76倍といった評価水準に対する警戒感が根強い。2024年の業績では売上28.7億ドル、純利益4.6億ドル、5四半期連続のGAAP黒字を達成し、AIを中心とした商業・政府部門双方での急成長が裏付けられている。
アナリストの見解は分かれており、大半が「ホールド」評価を維持する一方で、今後の商業部門へのAI拡大や次回決算の結果が評価見直しの鍵になるとの声もある。今回のNATO契約が象徴するのは、AI導入の「理論」が安全保障現場で実装段階に入ったことへのひとつの証左である。
NATO契約で欧州防衛市場における影響力を拡大したパランティアの戦略的前進

2025年4月に発表されたNATOとの「Maven Smart System NATO(MSS NATO)」契約は、パランティア・テクノロジーズが米国防総省との連携を経て、欧州全域の防衛機構に技術提供を本格化させる転機となった。同社は既に米陸軍・空軍・宇宙軍にAI基盤を供給しており、2024年9月には1億ドル規模の米軍契約延長を獲得していた。今回のNATO導入決定は、この既存の信頼と実績が国際的な信認に発展した結果といえる。
この契約によってパランティアは、欧州防衛技術市場において競争優位な立場を確立する可能性を得た。ただし、今回のニュースはPLTR株にとって一時的な刺激となった一方、長期的な持続成長には追加の契約獲得と現場導入の定着が求められる。トランプ大統領による国防予算削減の可能性が浮上する中、国外での収益源強化は戦略的な意義を持つ。したがって、NATO契約は単なる1件の受注ではなく、地政学的リスクに備える収益構造の再編とも捉えられる。
5四半期連続のGAAP黒字と高水準のフリーキャッシュフローが示す財務の安定性
パランティアは2024年第4四半期決算で、前年比36%増の売上8億2,800万ドルを記録し、調整後EPS0.14ドルと市場予想を大きく上回った。また、GAAPベースで7,900万ドルの黒字を計上し、5四半期連続の黒字達成を果たした点も注目される。営業キャッシュフローは4億6,000万ドル、フリーキャッシュフローは5億1,700万ドルに達し、いずれも50%を超える高いマージンを示した。
契約規模でも拡大が見られ、100万ドル超の契約は129件、5百万ドル超が58件、1,000万ドル超が32件に達し、米国商業契約の総契約価値は前年比134%増の8億300万ドルとなった。これらの数字は、同社のAIプラットフォームが防衛のみならず商業分野でも評価を受けていることを示している。ただし、PSR約76倍やPER285倍という極めて高いバリュエーション水準には、依然としてリスク認識がつきまとう。現行評価の正当化には、今後の収益成長率とキャッシュ創出能力の維持が欠かせない。
市場の評価は分かれたまま 投資家の視線は商業部門の拡張と5月の決算発表に集中
パランティアの株価は2025年4月14日に4.6%上昇し、年初来の上昇率は20%に到達した。これはS&P500が同期間に10%以上下落している中で際立つパフォーマンスである。一方で、アナリストの評価は二極化しており、Barchartのスコアでは5段階中2.85と中立に近い水準に留まる。ストロング・バイは3件、ホールド12件、ストロング・セルは4件と、慎重な姿勢が目立つ構成である。
評価が分かれる背景には、現行の株価が多くの公正価値モデルを大きく上回っている点がある。現時点の90ドル超という水準を正当化するには、商業部門でのAIプラットフォーム導入の広がりが鍵となる。特に注目されるのは、2025年5月5日に予定される次回決算発表である。この発表が予想を上回る内容であれば、評価見直しの引き金となる可能性もあるが、逆に期待外れであれば高PER水準が逆風となる恐れがある。市場の視線は次の一手に集中している。
Source:Barchart