Alphabet株に対する大規模なアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)プット取引が、2025年5月9日満期で急増している。行使価格120ドルという現在価格を24%以上下回る水準にもかかわらず、800万枚超の取引が成立し、大手機関が保有株下落に備えて“クラッシュ保険”を講じたとの観測が強まっている。
一方、Alphabetの第4四半期フリーキャッシュフローは248億ドルで売上高の26%を占め、FCF利回り評価による推計では、GOOG株の公正価値は最大で現在水準の1.6倍、株価にして256ドルが理論値となる可能性も示された。こうした強固なキャッシュ創出力が中長期の割安感を支える一方、短期的には急落リスクに対する市場の警戒が根強いことを、今回のオプション市場の動きが如実に物語っている。
OTMプット800万枚が示す機関投資家の警戒感

2025年5月9日満期のGOOGプットオプションが、行使価格120ドルという極端に低い水準で800万枚以上取引された。これは4月15日時点の終値158.68ドルから24%以上下の価格帯に位置し、深いアウト・オブ・ザ・マネー状態にあるにもかかわらず、異例の規模で取引された点が注目される。
売り手はプレミアム収入を確保しつつ、買い手は大幅下落への備えを講じた格好であり、ヘッジ取引の典型例といえる。デルタが3.5%、価格下落確率が4%未満であることから、売り手にとっては現金収入を得る低リスクな手法である一方、買い手にとっては数百億円規模の保有ポジションに対する保険という位置付けとなる。
こうした戦略の背景には、短期的な市場変動リスクへの警戒があると考えられる。特に、NASDAQ全体のボラティリティ上昇や、テック株の評価圧縮が断続的に生じている中で、リスク管理を徹底する動きが広がっている可能性は否定できない。また、保険料がコスト比で0.27%と極めて低廉であることも、大口保有者にとっては導入を後押しする要因とみられる。単なる投機的な動きではなく、資本効率と防御力を同時に追求する資産運用上の合理的判断の現れといえるだろう。
FCFマージン25%が導くGOOG株の理論価値
Alphabetの2024年第4四半期におけるフリーキャッシュフローは248億ドルに達し、売上高に対する比率は25.75%と過去最高水準に近い。この比率は前年同期比で1.81倍の成長を示しており、営業レバレッジの強さを如実に物語っている。
こうした高水準のキャッシュ創出能力に基づき、将来の売上高に一定のマージンを適用することで、合理的な株価評価が可能になる。たとえば、NTM売上高が4093億ドル、マージン25%、FCF倍率30倍と仮定した場合、GOOGの理論的な時価総額は3.1兆ドル、株価は256.43ドルとなる計算である。
現在の時価総額1.918兆ドルと比較すれば、61.6%の上昇余地が示唆されるが、これは予想FCFマージンを22%、利回りを3.5%とするより保守的なモデルでも成り立つ。この場合でも目標株価は213.90ドルと、依然として現行水準を上回る。
一方、こうした理論値が実現される保証はなく、マクロ経済環境の変動、広告事業の成長鈍化、規制圧力などの影響を受ける可能性もある。だが、定量的に見たGOOG株の割安感は、現段階においても一定の説得力を持つ構造となっている。
プット売却戦略にみる短期インカム運用の妙味
オプション売却によるインカム確保は、特に利回り低下局面において注目される運用手法の一つである。今回のGOOG $120プット売却では、1枚あたり約41セントのプレミアムが得られており、理論上は0.342%の収益となる。取引期間が24日間である点を踏まえれば、年率換算で5.17%のリターンを実現することになる。リスクは限定的であり、デルタ3.5%という低い価格変動感応度がそれを裏付けている。
このような取引は、ボラティリティが過度に上昇せず、かつ急落の可能性が限定的な大型株においては特に有効であり、現金ポジションを寝かせることなく利回りを稼ぐ「現金代替戦略」として機能する。もっとも、これは流動性や執行制度が整った市場での活用が前提であり、一般投資家が模倣するには高度な管理体制と知識が求められる。
また、ヘッジの逆側に立つ立場として、突発的な市場ショックへの備えが不可欠である点にも注意が必要である。短期インカム戦略としての妙味はあるが、あくまで限定的かつ戦略的な活用にとどめるべきである。
Source:Barchart.com